AIWAの2ヘッドシングルキャプスタンデッキ、AD-7500です。
40年以上の製品とは思えないくらいの美品です。
オーナー様は、故障品を入手後、劣化したベルト交換したものの、モーターが回りっぱなしになってしまったということです。
キャプスタンモーターは、電源ON時は常に回転しているタイプと、再生を開始したときに回転しだすタイプがありますが、この機種は後者ですので、回りっぱなしということはどこかに不具合があるということになります。
しかし、当店で動作確認したときは、初めはモーターは停止していました。カセットをセットしての再生も可能でした。
ところが、再生を停止したあとは、オーナー様のお話しどおり、モーターが回りっぱなしになってしまい再生不良になりました。それと関係があるのか、カセットを取り出した後もオートストップ用のソレノイドが数秒おきに「ガチャン、ガチャン・・・」と作動します。
早速カバーを開けます。外装も美品でしたが、内部も非常に綺麗です。
メカを点検すると、キャプスタンモーターのONOFFスイッチがONの状態になっています。
そのスイッチをONOFFするレバーを指で押し下げると、モーターの回転が停止しました。しかし、再度再生ボタンを押すと、レバーが上がりっぱなしになってしまいます。レバーの動きに多少の抵抗感がありましたので固着しているのでしょうか?ところが、何度か繰り返していると、突然、何もなかったようにレバーがスムーズに動くようになりました。ということは固着ではありません。
可能性としては、ベルトを交換した際の組み付けに問題があり、パーツ同士が干渉していたということが考えられますが、正常になった現状では原因を調べることはできません。
繰り返して操作しても問題は起こりません。
ただし巻き戻しには難があります。レバーを強く押さえるとリールは回転しますが、指を離すと止まってしまいます。
メカの状況を確認すると、フライホイールの回転をリールに伝達するアイドラー(写真中央)がスリップしています。しかし、このアイドラーは早送り用も兼ねていて、早送り時はスリップしませんので、ゴムの劣化ではなく、摩耗が原因である可能性が高いと思われます。
なお、このメカには、計5ケのアイドラーゴムが使用されていますのでご参考としてください。
1 早送り巻き戻し用 16.8*12.8*2
2 再生用A 12*8*1.5
3 再生用B 23.8*19.8*2
4 右リール用 23.8*18.8*2
5 左リール用 23.8*18.8*2
以上となります。すべてメカを降ろさずに交換可能ですが、純正品は入手できませんので、交換する際には1mm単位の近似サイズのものに交換することになります。
背面のパーツを分解し、
アイドラーユニットを取り出します。ゴム自体にはそれほど硬化は見られません。
ゴムリングを交換します。元々の外径は16.8mmでしたが、少し大き目の代替品を取り付け、17.3mmとなりました。
元通り組み立て後、巻き戻し状態にしてリールを摘まみます。トルクは十分でスリップはありません。
巻き戻しと早送りのテストを行います。テープの初めと終わりでは左右リールに掛かる力が変化しますので、最初から最後までテープを走らせます。
再生時のトルクも問題ありません。
調整に移ります。315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
調整します。
ヘッドアジマスの調整を行います。
左右同レベルの信号をINPUTします。
録再バランス調整を行います。テープポジションごとに調整可能な仕様です。
聴感で録再の音質を点検し、修理完了です。