少し前に、これまで2度ほどカセットデッキを当店で修理されたお客様に、SONYのTC-WR870というオートリバースのダブルデッキをご購入いただきました。
しかし、最近になって、リバース動作時にリールが回転せずに停止するという具合が起きるようになったとのご連絡をいただきました。私も同様のメカを搭載したSONYのダブルデッキで似たような経験をしたことがあり、その時は、アイドラーのギヤ欠けが原因でしたので、今回も同様と思い、機器をお送りいただきました。
しかし、到着後の動作確認では不具合は再現されませんでした。メカを降ろしてアイドラーギヤを点検しましたが、予想に反し、ギヤ欠けはありませんでした。
オーナー様は、事務所でこのデッキを使用されているということですが、不具合は、休み明けの月曜に発生したということです。ただし、時間の経過により、次第に正常に動作するようになったということで、室温に関係があるのではないかとのお話をいただいていましたので、それを再現することにしました。
作業部屋の窓を開け、数時間待ちます。室温は零度以下になりましたので、その環境でデッキを動作させます。すると、動作不良が起こりました。メカの状態を確認すると、モード切り替え用のゴムベルトが低温で硬化しスリップしたことが原因のようです。
そこで、そのベルトをスリップしにくいタイプに交換し、先ほどと同様の環境で不具合が起こらないことを確認し、オーナー様の元にお返ししました。
機器の取説を確認しましたが、メーカーでは使用時における室温などの使用環境については特に記載はありませんでしたので、私が修理時に使用したベルトの微妙なサイズや材質が今回のような状況をもたらしたようです。
カセットデッキでは、ほぼすべてと言っていいぐらいゴムベルトが使用されていますが、今回のような相当の力が加わる箇所では、ベルトの選定に細心の注意が必要です。