オーディオ機器を含む家電製品の修理において、整備性の良し悪しは、修理を行う者にとってはもちろんのこと、オーナー様にとっても非常に重要な要素です。
一例を挙げると、写真は先日修理した、SONYのカセットデッキTC-K333ESです。カバーを開けると、左側に電源・コントロール基板、右側にオーディオ基板が並んでいます。
裏返して底板を取り外した状態です。
回路に故障がある場合、状況によっては、部品をひとつずつ順番に取り外して点検を行わなければなりませんので、表も裏もまったく支障物が無いこういった機器では、修理を迅速に行うことが可能となり、結果として修理費用が安価になります。
一方、これはEXCELIAのXK-009ですが、左側は電源・コントロール基板、右側はオーディオ系の基板が2層になっています。さらには、配線やフロントパネルのスイッチと連結している棒状のパーツが下層基板の上に被さっています。この状態で、下層基板に故障があった場合、修理は非常に困難です。
例えば、予め、「この部品が故障している」ということが分かっている場合は、支障となるパーツをすべて取り外したうえで、故障した部品を交換すれば良いのですが、そういったケースは稀で、大抵は、故障しているパーツを見つけるまで何度も何度も支障パーツの脱着を繰り返さなければなりませんので、かなりの手間が掛かりますし、それに比例して費用も嵩みます。
これはPIONEERのCT-8の内部写真です。この時代(1970年代)の機器は、ユニット間の接続は、コネクタではなく直接ケーブルが半田付けされていることが多いため、基板の脱着が困難です。また、何度も脱着していると、半田付けされている配線が断線するなど厄介なトラブルに見舞われることがあります。
これはAKAIのGX-93です。基板は2層になっていて、上部がコントロール基板、下部はオーディオ基板です。この機種を修理する際の問題は、本体の底板を取り外すことができないということです。
そのため、万一、下部のオーディオ基板に故障がある場合は、上部の基板を取り外し、さらにオーディオ基板を取り外さなければ部品交換ができません。前述のとおり、故障箇所の特定ができないときは、何度も何度も基板の脱着を繰り返さなければならないので厄介です。
最後の例になりますが、部品入手の可否も修理に大きな影響があります。
これも先日修理したTC-K333ESの例になりますが、録音時にノイズが混入するという不具合を抱えていました。原因は、ドルビーICの故障でしたが、たまたま手元にジャンク基板の在庫があったため、比較的迅速、かつ安価で修理することができました。
古い機器には、こういった特殊なパーツが使用されていることが少なくありません。中には現在も流通しているものもありますが、デッドストックとなっている場合は、ほぼ修理不可能となってしまいます。
カセットデッキもDATも、製造後30年以上経過したものがほとんどですので、メンテナンスの頻度もそれに比例して多くなります。そういったときに、費用面からも整備性の良否が重要な要素になることは間違いありません。