A&Dの限定生産モデル、GX-Z9100EXの修理依頼をいただきました。
2014年末に動作品として購入され、1年ほどは正常に稼働していたものの、ローディング動作に不具合が生じ始め、当分の間、放置状態だったということです。
また、機器を移動した際に、内部から「カラカラン」という音がしましたので、パーツの脱落等が発生しているようです。
電源を入れると「ギー」という音とともに勝手にトレイが開きます。
ヘッド周りの点検を行います。
テープガイドが左右とも破損しています。固着等でピンチローラーが下がり切っていないときに、テープを無理に取り出すとこういった状態になりますが、オーナー様は心当たりが無いということですので、前所有者の関係でしょうか。
カバーとフロントパネルを取り外します。
破損したテープガイドが出てきました。
ここで、普段見られない状態が確認されました。テープポジションの表示が「METAL」と「CrO2」の両方が点灯しています。この機種では、テープをセットしていない状態では「METAL」のみの点灯ですので、故障が起きていることになります。
早速回路図を確認します。コントロール基板のこのトランジスタが表示を切り替えていますので交換します。
無事復旧しました。
メカを取り出します。
ホルダーと化粧パネルを切り離します。
ホルダーを分解します。
ホルダーのガイドピンが補修されています。おそらくテープガイド破損と関連があると思われますが、これはこれで問題はありません。
ホルダー内蔵のスプリングを脱着し、
加熱整形します。
右側のピンチローラーアームが固着しています。
折れたテープガイドは接着しても歪みが出ますので、
中古パーツと交換します。
製造時に塗られたと思われるグリスが固まっています。
分解清掃し、再グリスします。
右側のテープガイドも破損しています。
これも中古パーツと交換します。
ピンチローラーは研磨清掃し再利用します。
左右リールとアイドラーを取り外します。
右は元々付いていたゴムリングですが、内径が少し大きいようです。
そのため、ビニールテープが巻かれていました。
交換します。
ゴムリングが面する箇所を脱脂します。
メカ背面のモーター基板を取り外します。
ベルトがかなり汚れていますので、後ほど交換します。
ベルトのカスを清掃します。
「ギー」と異音を発していたカムモーターです。
代替モーターと交換します。ベルトも新品です。
テープポジション検出スイッチの接点を磨きます。
新しベルトを掛けて組み立てます。
整備したメカを本体に組み込んで動作確認を行います。スムーズかつ静音です。
ミラーカセットを用いてテープパスの点検調整を行います。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
ヘッドアジマスの調整を行います。
バイアスキャリブレーション後に録再バランス調整を行います。
聴感での録再状況を確認します。
修理前は満身創痍状態でしたが、これで完全復活しました。