少し前に当店で修理したGX-R65CXですが、「録音をするとRCHに異音が記録される」「ただし、時間が経過すると自然に解消される」という不具合が起きたとご連絡をいただきました。
録音中はメーターの振れもOUTPUTからの音は正常ですが、いざ再生してみると、「ピー」というノイズが右チャンネルに乗っています。
時間の経過により自然に復旧するということは、熱の影響が考えられますので、半田クラックが原因でしょうか?
INPUTにサイン波を入力し、録音スタンバイ状態にします。そして、RECアンプの入口に、オシロスコープを接続すると、サイン波が表示されました。ここまでは正常です。ところが、スタンバイを解除し録音が始まると、サイン波がノコギリの歯のようなギザギザの波形に変化します(写真は撮り忘れました)。どこからかノイズが紛れ込んでいます。
そこで、周辺のケーブルを引っ張ったり、パーツや基板を指で押し付けたりしましたが、変化は見られません。通常、半田クラックであれば、何らかの反応があるはずです。
原始的な方法ですが、RECアンプ周辺にドライヤーで熱を加えます。すると、2秒も経たないうちに波形が正常に戻りました。やはり半田クラックが疑われますが、それにしてもあまりにも反応が早すぎます。
メイン基板を取り出して目視で点検します。
半田クラックらしきものが見つかりました。その場所は、まさにRECアンプ回路です。「これで修理完了」と思いましたが、組み立てて動作確認を行うと、残念ながら改善は見られませんでした。
ドライヤーを当てた位置から、不良個所の範囲を絞ることはできましたが、場所を特定することができません。
時間が経過し、かなりモチベーションが低下した頃です。AKAI(A&D)の機器では、ケーブルが直接基板に半田付けされている箇所には、すべてではありませんが、補強のために接着剤が塗られているところがあります。しかし、そのすぐ近くのコンデンサーや抵抗などの関係ない箇所にも付着(右写真中央のキャメル色のもの)していることがわかりました。おそらく製造時に誤って垂れてしまったものと思われますが、そこは、まさにRECアンプ回路内の部品です。
試しにそれを除去してみました。
半日ほど様子を見ましたが、波形が乱れることは無くなりました。念のためもう2・3日は様子を見る必要はありますが、接着剤が経年により変質し、コンデンサーなどに電気的・物理的な悪影響を及ぼしていた可能性は十分考えられます。ただし、温度変化がそれにどのように関わっているのかはわかりません。
その後、3日ほど経過観察しましたが症状は再発しません。しかし、今回の故障原因は理論的に解明ができていませんので、念のためもう2・3日様子を見てオーナー様のところにお返ししたいと思います。