SONYの3ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、TC-K555ESGの修理依頼をいただきました。
20年ぶりに使用したところ、「再生不可」「蓋が完全に閉まらない」といった状況だったとのことです。
蓋(リッド)がグラついています。
固定するためのツメが破損しています。
手元にあるパーツと交換します。
動作状況はというと、ヘッドが上がらないため再生できません。
カバーと底板を取り外します。
555ESGと333ESGの大半に、ELNA製電解コンデンサーの液漏れが発生しますので点検を行います。左は録音基板、右はヘッドホン基板、
そして再生基板です。いずれも問題は見られません。
メカを降ろして分解を進めます。
ピンチローラーアームを取り外す前に、調整式になっている左側の位置を測定します。すると、製造時の値(21.1mm~21.5mm程度)から約1mm、手前の位置にあることがわかりました。おそらく、取付シャフトが抜け出してきていると思われます。
アイドラーの支点部が固着しています。ESGモデルに稀に見られる状況ですので、取り付け時にグリスアップを行います。
さらに分解を進めます。
キャプスタンモーターユニットを分解します。
ピンチローラーアームが取り付けられていたシャフトです。製造時の値は47.7mmほどですので、やはり抜け出しています。
引っ張ると簡単に抜けてしまいました。抜け出し防止の処置を行い、正規の位置に取り付けます。
モーター基板上の電解コンデンサーを交換します。
新しいベルトを掛けて組み立てます。
メカフロント部です。ゴムベルトが無くなっています。
分解すると、加水分解で溶けたベルトがモータープーリーに絡まっていました。
綺麗に清掃します。
もう片方のプーリーを脱脂し、新しいベルトを仮掛けします。
ローターリーエンコーダーを取り外し分解します。
汚れた接点を研磨清掃し、スライド接点専用グリスを塗布します。
テープポジション検出スイッチの接点を磨きます。
メカを本体に戻して動作確認を行います。
ミラーカセットを用いてテープパスを点検調整します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
ヘッドアジマスの調整を行います。
録音状況を確認しようとしたところで問題が発生しました。キャリブレーションが効きませんし、右CHのレベルが異常に低い状況です。キャリブレーションのLEVELボリュームの接触不良が疑われます。
フロントパネルを取り外し、
スイッチ基板を取り外します。
これでLEVEL-VOLにアクセスすることができますので、背面から接点復活剤を処置します。
正常な状態に復旧しました。
録再バランス調整を行います。
テープポジションの異なる複数のテープで録再状況を確認し、修理完了です。