SONYのツイン録再クイックリーバスデッキ、TC-WR990の修理依頼をいただきました。
少し前に中古動作品として購入されたということです。当初は大きな問題はなく使用できたものの、このところ不調になって今回のご依頼に至りました。
デッキAです。なぜか途中までしか閉まりません。
ディスプレイが不定期に消灯します。
デッキBです。ヘッドとピンチローラーがグラグラしています。
カバーを開けます。ディスプレイの不具合は接触不良が疑われますので、各部を触れてみましたが、反応はありませんでした。
回路図を見てみると、ディスプレイのONOFFは、主電源とは別に、電源スイッチで行われていることがわかりました。そこで、試しに電源スイッチに軽く触れてみると、予想通り消灯しました。スイッチの接触不良です。
このスイッチは、2系統(主電源とディスプレイ)を同時にONOFFする仕組みになっていて、ディスプレイ系統のみ接触不良となったようです。
スイッチ基板を取り外し、スイッチを交換します。
メカを取り出しました。
デッキBです。モータープレートを支える支柱が根元から折れています。
それと関係があるのかわかりませんが、ヘッドとピンチローラーが外れかかっています。
まずはデッキAから整備します。写真中央部のビスは、後から取り付けられたものです。トレイ側のピンを折ったため、補修されたものと思われます。
部品が欠落しています。右写真はデッキBのものですが、トレイ開閉のショックを吸収するダンパーがありません。何か理由があって取り外されたものと思われます。
手持ちのパーツを取り付けます。
分解を進めます。
アシストモーターのプーリーが汚れています。以前修理された際に、溶けたベルトを除去しきれなかったようです。
清掃し、新しいベルトを仮掛けします。
ロータリーエンコーダーを取り外し、分解します。
汚れた接点を研磨清掃します。
テープポジション検出スイッチの接点を磨きます。
新しいベルトを掛けて組み立てます。しかし、本体に組み付けて動作テストを行いましたが、修理前と同様、トレイが完全に閉まり切りません。
原因はカセットホルダーにありました。
左は元々取り付けられていたもの、右は手持ちのパーツです。冒頭で記載したとおり、ピンが破損してビス止めに補修されていたため、動きがギクシャクしてスムーズに動作していませんでした。ダンパーはそれを回避するため対処療法的に取り外されたものと思われます。
ようやく正常に動作するようになりました。
続いてデッキBです。折れた支柱の状況です。左右とも折れています。
粘りの強い弾性接着剤で補修します。バネで圧着状態にして一晩待ちます。
翌日接着が完了したことを確認し、デッキAと同様の整備を行いました。
デッキBの動作確認を行います。
調整に移ります。テストモードに設定し、テープ速度を調整します。まずはハイスピード、
続いてノーマルスピードの調整をデッキA・Bに行います。
ヘッドアジマスはFWD,REVの両方向で行います。もちろんデッキA・Bともです。
録再バランス調整を行います。
録再状況を耳で確認し、修理完了です。