AKAIのGX-9のご依頼です。
かなり以前から不調な状態が続いていたということです。
カセットをセットしクローズボタンを押しますが、すぐに開いてしまいます。
カバーを開けます。
ケーブルの関係上、この状態で作業を行います。カセットホルダーと化粧パネルを取り外します。
ホルダーには、カセットを押さえ付けるための樹脂製スプリングが内蔵されています。変形が無いことを確認します。
ピンチローラーアームの固着が見られます。
硬化しているピンチローラーを交換します。
ヘッド周りやリール周りのパーツを分解し、清掃やグリスアップ等を行います。
アイドラーゴムを交換します。
ブレーキパッドは剥がれにくい対策品に交換済みです。
ゴムリングが接する面を脱脂します。
背面の基板を取り外します。
分解を進めます。
カムモーターのベルトを交換します。
テープポジション検出スイッチの接点を磨きます。
新しいベルトを掛けて組み立てます。
メカを元に戻して動作確認を行います。
当初、操作ボタンに接触不良が見られましたが、使用しているうちに解消されました。
ミラーカセットを用いてテープパスを点検します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し、速度の調整を行います。
ヘッドアジマスの調整を行います。
オートチューニング後に録再バランス調整を行います。
ここで問題が発覚しました。メタルテープとクロムテープ使用時に、テープポジション表示に不具合が発生します。
クロムテープをセットすると、テープポジション表示が、「クロム」のほか「メタル」がチカチカと光ることがあります。また、メタルテープをセットすると、「メタル」のほか「クロム」がチカチカと光ることがあります。なお、ノーマルテープでは問題ありません。
通常、こういった状況は、テープポジション検出スイッチの接触不良が原因ですが、点検した結果、表示をコントロールするICの出力に問題があることがわかりました。
回路図を確認します。IC10のLB1292が表示をコントロールしています。④⑤⑥にテープポジション切り替えの4.5Vの信号が入力され、それを⑪⑫⑬のいずれかに約27Vの電圧に増幅してディスプレイを点灯させます。
どうやら、ICの内部の絶縁が低下し、27Vと比較的高い電圧のため、関係の無い端子にリークしてしまったようです。
これが問題のICです。幸いにもパーツはまだ流通しているようですので、オーナー様に意向を確認したうえで、部品発注を行います。
5日ほど待って入荷しましたので交換を行います。
無事治りました。
テープポジションの異なる複数のテープで録再状況を確認し、修理完了です。