ナカミチの2ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、480です。
昨年末に「再生可、録音不可」という状態で購入されたということですが、実際には走行も不安定ということです。
早送りや巻き戻しはほとんどリールが回転しません。
再生はヘッドとピンチローラーが上がらないため走行しません。ピンチローラーアームの固着が無ければ良いのですが・・・。
カバーを開けます。
アイドラーゴムは見るからに劣化しています。
底板も取り外し、とりあえずモードベルトを交換してみます。これはメカを降ろさずにできます。
かなり劣化していました。
これでかろうじてテープ走行ができるようになりましたので、心配していたピンチローラーアームの固着はないということになります。
録音の状況を試してみます。録音中のSOURCE音は正常ですが、録音後に再生してみると、小音量でブツブツといった感じのノイズ状態です。両CHとも同じ状況ですので、電源ラインの問題でしょうか?
不具合箇所の特定は困難ですが、ナカミチのデッキでは「オレンジキャップ(orange capacitor)問題」というのがあり、写真のようなオレンジ色のPPコンデンサー劣化による故障が多発します。しかし、今回は両CHとも不具合が見られますので、同時に故障するということは、一般的に考えにくいと言えます。いずれにしても交換は必要ですので作業を進めます。
治りました。バイアス回路のPPコンデンサー故障が原因でした。おそらく最初は片CHのみ故障して、時間の経過によりもう片CHも故障したのでしょう。もちろんオレンジキャップはすべて交換しました。
これで安心してメカの整備に移れます。フロントパネルを取り外します。
しかし、この機体には少し問題が見られます。メカから伸びている「再生/録音」を切り替えるためのワイヤーが細長いスイッチに固定されているのですが、本来はビス止めになっているところが、ガッチリと接着されています。おそらく、経年により割れたため、以前の修理者がやむを得ず処置したものと思われます。
メカを脱着する際には、通常、この部分を切り離しますが、無理に外すと、破損が拡大する恐れがありますので、今回はこの部分はそのままで作業を進めることとしました。
指で摘まんでいるのがワイヤーです。本体の上に板を敷いて、メカをその上に載せての作業となりますので窮屈です。
背面から分解していきます。
ようやくリールユニットにたどり着きました。
普段は、アイドラー部分のみ脱着しますが、作業性の関係から、アームごと取り外しました。
ここで豆知識を紹介します。この機体のアームは金属製ですが、同じメカでもプラスチック製のものが存在します。プラスチック製のものは、経年劣化でアームが曲がり、アイドラーゴム傾くため、リールのの接地面積が小さくなり、リールの回転に不具合が生じることがあります。
ゴムはプラスチック化してガチガチに固まっていて、ニッパーで削りながらの作業となりました。除去後は、以前特注したゴムリングに交換します。
ここで新たな問題が見つかりました。ゴムリングが接するリール部分に細かい傷が無数に付けられています。ゴムの硬化でスリップしたため、傷を付けて摩擦力を高めようとしたのでしょうが、これでは逆効果です。
組み立て後に不具合が出ると手戻りになりますので、リールモーターに直接電圧を印加し、左右リールが問題なく回転することを確認します。
誤消去防止孔検知スイッチの接点を磨きます。
新しいキャプスタンベルトを掛けて組み立てます。
カウンターベルト(1)を交換します。なぜか2本掛けしてありました。
カウンターベルト(2)を交換します。
カセットホルダーとヘッドブロックを取り外し、
ピンチローラーを取り外します。表面が劣化していますが、同じサイズのものは入手できませんので、
軽く研磨した後に、専用クリーナーで処理します。状態がかなり改善されました。
メカを本体に戻して動作テストを行います。走行良好です。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し、テープ速度の調整を行います。
ヘッドアジマスの調整を行います。線の長さは高域の出力を表しますので、かなりの改善があったということになります。
テープポジション別の録再レベル調整を行います。
テープポジションの異なる複数のテープで録再状況を確認し、修理完了です。