以前からお取り引きいただいている方から、SONY製オートリバースカセットデッキ、TC-RX80の修理依頼をいただきました。
一昨年に他業者にて一度修理されたということですが、修理後に速度が不安定になり、不具合も再発したということで当店の出番となりました。
再生ボタンを押すと、ヘッドとピンチローラーが上がらないため、テープが早送り状態になってしまいます。
カバーを開けます。
再生ボタンを押したときのメカの動作状況を観察します。銅色のコイル状のものが、メカの動作を切り替えるためのソレノイドですが、動きが今ひとつです。そこで、試しにドライバー先端でソレノイドの動きをアシストします。
すると、一旦は再生状態になりましたが、一度停止すると元の状態に戻ります。メカの固着が原因のようです。
メカを降ろします。ヘッド周りには問題は見られません。
心臓部にアクセスするため、支障となるパーツを分解していきます。
リールモーターを固定しているビスを緩め、
リールモーターを取り外します。
基板を取り外します。
モータープレートやフライホイール、ソレノイドに取り付けられているレバーなどを取り外していきます。
ソレノイドの鉄心(プランジャー)を引き抜きます。抜くときに、かなりの抵抗感がありましたので、鉄心の状態を確認すると、グリスのようなものが塗られていました。それが原因で動作不良となっていたようです。
この状況は、同様の報告をネットで見たことがありますので、そもそもは製造時の問題と思われます。通常、鉄心にはグリスは塗布しませんが、この機種に限って工場で誤った処置がなされたと考えられます。
しかし、以前修理した際に、このソレノイドの問題が指摘されていたにも関わらず、その時は注油のみの処置であったと聞いていますので、不完全なメンテナンスでの再発ということになります。
鉄心とコイル部分のグリスをアルコールでクリーニングし、粘度の低いシリコンオイルを塗布します。組み付け後に鉄心がストレスなく動くことを確認します。
元どおり組み立てていきます。
本体に組み付けて動作確認を行います。
テープ速度を調整しましたが、オーナー様のお話しのとおり、速度が1%以上と大幅に変動します。これでは使用に差し支えがあります。
再度メカを降ろします。キャプスタンモーターは純正のものではありませんので、前回修理で交換されたと思われますが、これが海外製の不良品だったようです。手元に日本製の同型のモーター(長期保管品)がありましたので交換します。
速度が安定しました。
FWDのヘッドアジマスの調整を行います。
REVも同様です。
バランス調整を行います。
録音再生状況を耳で確認します。
修理完了しました。スペクトラムアナライザーが見ていて楽しいですね。