これまで何度もお取り引きいたただいている方からのご依頼です。
SONYの名機、TC-K777ESⅡです。オークションで入手されたということですが、特定のテープで「冒頭で音が籠る」「テープに斜めの傷が付く」のほか「バイアスキャリブレーションが不調。音が歪む」などの不具合があるということです。そのオークションでは「音が出ない意外はノークレームノーリターン」ということで、クレーム対応は不可という状況です。
オリジナルの録再独立ヘッドから、ESG以降のコンビネーションヘッドに交換されています。おそらく摩耗したため交換されたのでしょう。
録音状況を確認します。ノーマルテープでは問題ありませんが、クロムとメタルでは、音量低下や歪みが発生します。この症状は、ヘッドの性能低下が原因です。交換されたESG以降のヘッドで近年多発している症状ですが、修理は交換しかありません。しかし、良好なヘッドの入手方法を考えると、現実的には非常に困難です。
続いてテープ走行関連の点検です。巻き取りトルクとバックテンションを測定します。巻き取りが5割ほど強い状態です。バックテンションは問題ありません。
テープパスは目視での異状は見られませんが、微妙な調整が必要な場合があります。
カバーを開けてトルク調整を行います。
適正値になりました。
同梱いただいたテープです。斜めに傷が入っています。当初の動作確認では、事前のお話どおり、左右バランスの狂いや音の籠りなどが見られましたが、バックテンションを少し強くし、テープパスも僅かに調整することにより正常に再生されるようになりました。
こういった特定のテープで不具合が発生するケースは、特にSONYのデッキでは珍しいことではありません。目視での調整では限界がありますので、最後は、不具合の起きたテープに合わせて、各部を微調整するしかありません。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。0.6%速くなっていますが、聴感では問題とならない程度です。
ヘッドアジマスを調整します。
再生バランス調整を行います。
録再バランス調整を行います。
バックライトが切れています。オーナー様からLED化のご依頼をいただいています。
フロンパネルを取り外します。ランプカバーを取り外すためにはメカの脱着が必要です。
メカを降ろして、カセットホルダーを切り離します。
配線を切断し、ランプカバーを取り外します。
電球色のLEDを用います。電圧調整のため470Ωの抵抗を接続します。
本体に組み込む前に点灯テストを行います。オリジナルと比べると10倍は明るくなりました。
ついでですので、ご依頼にはありませんでしたが、基板上の半田クラックが発生しやすい箇所を目視点検します。異状ありません。
これもサービス作業です。モーター基板上に半固定抵抗がずらっと並んでいます。左端のものが黒ずんでいるのがわかるかと思います。これは、調整時用の切り替えスイッチですが、接触不良でキャプスタンが回転しなくなります。
新品の普通の半固定抵抗を分解して、
導通部分を削り、スイッチに改造します。
元どおり組み立てて、劣化したスイッチと交換します。
以上修理完了です。