道内の方からのご依頼です。
数年前に中古動作品として購入された機器ということですが、使用するにしたがって色々と不具合が発生し、今回の修理に至りました。
「1 テープにシワがよってしまう。」「2 カウンターの時間表示に狂いがある。」「3 録音時、以前録音されていた左側の音が消去されずに少し残ってしまう。キャリブレーション時に録音される信号音も同様。」「4 テープによってはキャリブレーションがつまみの範囲内ではできないことが多い。」「5 再生ボタンを押しても少し動作音がしただけで動かない。2回目の操作で動く。」「6 CDからの録音時にsource音のレベル表示がが振り切れてしまう(左側)。rec levelのつまみを回して調整しようとしてもうまくいかない。録音も正常にはできていない。」と不具合は多岐に亘ります。
再生ボタンを何度か押すと、ようやくヘッドが上がりテープ走行します。ベルトの劣化が原因です。
カセットを取り出そうとしたところ、パーツが内部から転がり落ちました。これは、オートセレクタ用のスイッチカバーです。
INPUTにCDを接続し、SOURCE状態にすると、LCHのメーターが振り切ります。もちろん音も割れています。
バランスツマミで調整は可能ですが、
RECVOLを回してもLCHのレベルに変化がありません。接触不良が起きています。
カバーを開けます。
RECVOLのコネクタを揺すると一瞬正常に戻りますので、この辺りの接触不良が原因です。
ツマミを取り外し、フロントパネルを本体から切り離します。
VOL基板を目視点検すると、何カ所か半田割れが見つかりました。
基板を取り外して、再半田します。
正常な状態に復旧しました。
続いてメカの整備に移ります。
先ほどのパーツはここに嵌っています。ほかの箇所も簡単に外れてしまいました。以前修理された方が、固定用の爪を折ってしまったようです。後ほど処置を行います。
少し前に修理した333ESAもそうでしたが、この機体も小さなコネクタの取り付け部の半田が割れていました。ロックが掛かっているコネクタを無理やり引き抜いたことが原因ですが、他の方が修理した機器は、注意が必要です。再半田を行い、次に移ります。
ご自分で修理される方はご参考としてください。こういったコネクタは、爪で凹側を押さえながら凸側を引き抜きます。
分解を進めます。
調整式になっている左側のピンチローラーアームの位置を測定します。製造時の位置と比べると、約1mm前方に移動しています。これがテープが傷む、あるいは録音不良の主な原因です。
劣化しているピンチローラーを交換します。
キャプスタンモーターユニットを切り離します。
ユニットを分解します。
指で摘まんでいるのは、先ほどのピンチローラーアームが取り付けられていたシャフトです。引っ張ると簡単に抜けていました。これは、ESA辺りのモデルによく見られる状況です。この部分は圧入で組まれていますが、製造精度のわずかな狂いにより発生します。
先ほどのピンチローラーアームが1mm移動していたのは、これが原因ですので、抜け止め処置を施して製造時と同じ位置まで差し込みます。
基板上の電解コンデンサーは交換済みです。
ベルトを交換して組み立てます。
メカフロント部を分解します。
モータープーリーの周りに傷が多く付いています。このメカでは、分解せずにベルト交換することが可能ですが、そう簡単ではありません。おそらく、以前の修理で、分解しないままベルト交換を行ったため、工具が擦れて傷が付いたものと思われます。
ベルトが掛かるプーリーを脱脂します。
元々付いていたベルトは劣化して伸びていました。新しいベルトを仮掛けします。
ロータリーエンコーダーを分解します。
汚れた接点を研磨清掃し、スライド接点専用グリスを処置します。
オートセレクタ用のスイッチ接点を磨きます。
ツメが破損したスイッチカバーは、接着で固定します。
この222ESAと前モデルの222ESLは、必ず点検しなければならない箇所があります。
メイン基板を取り外します。ドライバーの先端の横長の銅板は、アースラインです。
その銅板の半田部にクラックが発生しています。熱による膨張と収縮の繰り返しにより半田が割れてしまいますので、再半田します。
入出力端子の半田にもクラックがありましたので再半田します。
基板とメカを本体に戻して動作確認を行います。
ミラーカセットを用いてテープの走行状態を目視点検します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
ピンチローラーアームの調整後はヘッドアジマス調整が必須ですが、奇跡的に狂いはありませんでした。
バイアスキャリブレーションを行いますが、レベルが低い状態です。
基板上のRECLEVELツマミで調整します。
良好な状態になりました。録再バランス調整を行います。
テープポジションの異なる複数のテープで録再状況を確認し、修理完了です。なお、カウンターの速度の件については、CDを録音時にCDデッキの表示と狂いがあるとのことでしたので、それについては問題無いということをオーナー様にお伝えしました。