テープが傷むということで先日修理したV-6030Sですが、症状が改善されていないというご連絡をいただきました。
前回は、切れていたバックテンションベルトの修理などを行いましたが、同梱いただいた傷んだテープが使用不可状態でしたので、走行テストは、当店で所有する長尺テープで最終確認を行いました。しかし、テープが傷むというケースでは、特定のテープで起こることがほとんどですので、やはり症状が起きたテープでテストを行う必要があったようです。
しかし、一体何が原因でしょうか?
テープが傷む原因として考えられるのは、「1 ピンチローラーの劣化」「2 バックテンション不良」「3 テープパスの狂い」ですが、1と2は、経験上問題無いと思われます。
残りは3ですが、このメカでテープパスが狂うということは通常ありえませんが、念のため、ミラーカセットを使用してテープの走行状態を点検します。目視では特に問題は見られませんでしたが、ここであることに気が付きました。
前回は気が付きませんでしたが、再生中に左側のピンチローラーが1mmほど上下動しています。ピンチローラーが変形しているようです。これが今回の不具合の原因かどうかはわかりませんが、音揺れの原因にはなりますので、処置が必要です。
このメカは、ピンチローラーアームを脱着しても調整が不要なタイプです。メカを降ろしてピンチローラーを交換します。11mm*8mm*2mmです。
ピンチローラーの変形は何度か経験していますが、これまでは、いずれのケースもキャプスタンに密着した状態で故障し、そのまま長時間放置されたことにより、溝状の跡が残ってしまったという状況でした。
しかし、今回は、ゴム部分がわずかに楕円状態になっていたことが原因でした。なぜかはわかりません。
傷んだテープを同梱いただきました。今回は使用可能な状態でしたので、そのテープで走行テストを行います。しかし、残念ながら改善は見られませんでしたので、ほかに原因があるようです。
これはバイアスキャリブレーション中の写真です。走行不良のためLCHのレベルが上下します。ただし、すべてのテープではなく、特定のテープでのみ起こります。
前述のとおり、このメカでテープパスを調整する必要は、普通はありませんので、「まさかここは違うよな」と思いながら、テープパスの調整を試します。時計回りに180度ほどビスを回転させると、
走行不良は解消されました。目視ではわからないほどのわずかな狂いがあったようです。
お送りいただいたテープと、当店の所有するテープで走行テストを行い、問題が無いことを確認します。
今回の件に関する私の推測です。この機器は、現在のオーナー様が半年ほど前に中古購入されたものです。おそらく、前オーナーが所有しているときに、バックテンションベルトが切れて走行不良になり、それを解消するためにテープパスを弄ったのではないでしょうか?
中古購入された機器にはどんな落とし穴が待っているかわかりませんので、より一層の注意が必要です。今さらですが良い勉強になりました。