PIONEER製3ヘッドカセットデッキ、T-D7の修理依頼をいただきました。
事前にお聞きしていた不具合の状況としては、「音の曇り」「モーター等の駆動が怪しい」「リール両軸の頭の黒い部分が両方が、しばしば外れる」ということです。
まずはリールの状態を点検します。
先端のキャップを固定するワッシャーが無くなっていて、引っ張ると簡単に外れてしまいます。
手持ちのパーツを取り付けます。両方とも自然に脱落することは考えにくいので、何か過去に特別な事情があったと思われます。
テープ走行は可能です。速度が少し遅く感じますが、大きな問題は無いように感じます。
しかし、周波数特性を測定すると、左CHの高音域が大幅に減衰していることがわかりました。(縦線が4本ありますが、左から315Hz、1000Hz、10000Hz、12500Hzの出力を表します。左写真が左CH、右写真が右CHです)
CDを録音して再生モニターを行うと、明らかに左CHの音質が籠っています。点検を行った結果、原因は回路の故障ではなく、再生ヘッドの性能低下でした。
幸いにもスペアヘッドの在庫がありますので、修理は可能です。そこで、費用の増額についてオーナー様にご連絡したところ、快諾をいただきましたので作業を進めます。
カバーを開けてメカを取り外します。
まずは、硬化しているピンチローラーを交換します。
ヘッドブロックごと交換します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の調整を行います。
ヘッドアジマスの調整を行います。
再度周波数特性を測定します。左CHの高域帯が大幅に改善されました。
オートチューニング後の録再バランスの状況を点検を行います。
テープポジションの異なる複数のテープで録再状況を確認し、修理完了です。