以前からお取引いただいている方から、ナカミチのCR-50の修理依頼をいただきました。
イジェクトできないためテープが閉じ込められています。
操作ボタンのランプが全点灯しています。
カバーを開けました。
電源を入り切りしているうちに、メカが少し反応し、トレイが開くようになりました。ただし再生不可です。
フロントの化粧パネルを取り外し、メカを取り出しました。
ハウジング内の化粧パネルを取り外します。バックテンションベルトは正常のようですが、交換を行います。
リールとアイドラーを取り外します。回転センサーの光が当たる黒銀の面が汚れていないことを確認します。
トレイの開閉を検知するスイッチ接点を磨きます。
カムモーターユニットを取り外します。
接点は比較的綺麗ですが、清掃を行います。
カムモーターとリールモーターを無負荷状態で数時間空転させて内部接点の接触改善を図ります。
キャプスタンモーター基板とフライホイールを取り外します。
キャプスタンのシャフトに注油し、新しいベルトを掛けて組み立てます。
元通り組み立てます。
メカを本体に組み込んで、動作確認を行います。しかし、ヘッドが上下する際に「ギー」という、かなり大きな音が鳴ります。
音源は、カムモーターユニットです。モーターの軸受け劣化でしょうか?
再度ユニットを取り外し、直接電圧を加えます。やはり異音が発生します。
カムギヤを取り外すと音は発生しませんので、ギヤの変形が原因のようです。修理するためには、同様のメカを採用している機器(KENWOODのKXモデルなど)を入手し、換装するしかありませんので費用が嵩みます。このことをオーナー様にご相談したところ、GOサインをいただきましたので、手配を行います。
オークションで最も安価だったKENWOODのKX-880SRⅡというジャンク機を入手できましたので、早速ギヤを移植します。
異音が無くなりホッとしました。
しかし、ここでまた新たな問題が発覚しました。何もしていないのにメーターが勝手に振れてしまいます。ノイズなどは出力されていませんので、メーター回路の故障です。
接触不良が疑われますので、基板を指で押したり、ケーブルを引っ張たりしましたが、状況に変化はありません。
写真は、ディスプレイ基板の裏側です。回路図を見ながら点検を進めていくと、メーターを駆動するICが怪しいという結論にいたりました。しかし、IC故障では修理はできませんのでピンチです。
故障が疑われるのはこのICです。しかし、よくよく見ると、端子の周辺が茶色いベタベタしたもので汚れています。これは、フラックス残渣といって、半田付けの箇所から染み出る液体です。試しにアルコールで清掃してみます。
無事治りました。ここに至るまで約2時間要しました。
再生ヘッドのアジマス調整を行います。
録音ヘッドのアジマス調整を行います。
テープポジション別に録再バランス調整を行います。
聴感でのテストを経て、修理完了です。