SONYの4ヘッドDATデッキ、DTC-77ESの修理依頼をいただきました。
DATデッキの4ヘッドというのは、カセットデッキの3ヘッドと同じで録音中に再生モニターが可能なシステムですが、カセットデッキが「録音用」と「再生用」のヘッドが備えられているのに対し、DATデッキは、「録音・再生用ヘッド」と「録音時の再生モニター用ヘッド」が備えられているといった違いがあります。
故障したときの状況は、光入力での録音中にメーターが振り切り、そのまま録音不可になったということです。かなり珍しいケースです。
再生は正常(その後異常となりました)ですが、録音すると再生モニター音が出力されません。
カバーを開けます。まずは、不具合箇所の特定を行います。お客様のデッキのメカを取り出して、
私が所有する77ESの本体に接続し、動作確認を行います。結果は先ほどと同じでしたので、本体側ではなく、デッキメカ側に不具合が発生していることがわかりました。
ここでひとつ疑問が生じました。このデッキは、4ヘッド機ですので、録音ヘッドとモニター再生用のヘッドは別々です。実際は録音されているが、再生モニター音が出ていないだけではないかということです。
試してみます。録音後に巻き戻しを行い再生してみます。予想通り、録音はされています。ということは、モニター再生用のラインに不具合が生じているということです。
まず疑わしいのは、ヘッドです。
ヘッドチップを直接クリーニングしてみます。
ところが、今度は再生そのものができなくなってしまいました。症状が悪化してしまいましたが、クリーニングが原因とは考えられませんので、温度などの環境の変化が影響していると思われます。時間の経過や温度により症状が変化するのは、接触不良、または電解コンデンサーの劣化が原因です。
疑わしいのは、ヘッドの信号を処理するRFアンプです。
手持ちのメンテナンス済みRFアンプと交換します。
正常な状態に回復しました。RFアンプの不具合ということは、これまでの経験上、基板上の電解コンデンサー劣化が原因と思われます。
電解コンデンサーの交換を行います。まずはモニター再生用のRFアンプです。
電解コンデンサーを取り外すと、液漏れで基板がダメージを受けていました。
リードタイプの電解コンデンサーを取り付けます。また、液漏れによりスルーホール(基板の表面と裏面を繋ぐ箇所)が腐食し、絶縁していましたので、バイパス(紫色のケーブル)を設置します。
続いて録音・再生用のRFアンプです。
こちらも液漏れが見られましたので交換します。
ピンチローラーが硬化していましたので交換します。
動作確認を行います。無事回復しました。
モード別、入出力別の録再状況を確認し、修理完了です。