SONY製3ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、TC-K555ESⅡです。
10年ぶりに使用しようとしたところ、再生不可になっていたということです。
モニターの表示のうち、「TAPE」が点灯しません。
イジェクトボタンを押してもトレイが開かないため、指で開けてやらなければなりません。
カバーを開けます。再生不可の原因は、キャプスタンモーターが回転しないためでした。
向かって左側面にキャプスタンモーター基板があります。右写真の中央に写っている黒ずんだパーツはメンテナンス時にサービスモードに切り替えを行うスイッチです。
スイッチが絶縁状態ですので、バイパス線で短絡してみます。
これでテープ走行が可能になりましたので、録音も試してみましたが、録音自体は可能なものの、元々録音されていた音が完全に消えないことがわかりました。
まずは、絶縁していたスイッチを交換します。
フロントパネルを取り外します。
スイッチパネルを取り外します。
ランプ2ケのうち下側が切れています。電圧は12Vです。
LEDと抵抗を組み合わせて12V仕様のランプを作成します。
取り付け後、点灯することを確認します。
メカを降ろしました。トレイを開けるためのバネが外れています。
ハウジング内の化粧パネルを取り外します。裏に取り付けられているプリズムの表面をクリーニングします。これが汚れるとオートストップが働いてしまいます。
カセットホルダーを取り外します。
バネを支えるピンが折れていましたので、太めのワイヤーを埋め込みます。
ピンが折れた原因は、このゴムリングの劣化です。このゴムリングは、トレイが急激に開かないよう衝撃を吸収するためのものですが、このゴムが劣化して、トレイがいわゆる「ロケットオープン」したため、ピンがバネの力で折れたようです。
メカを目視点検します。すると、ピンチローラーがプラスチックのようにカチカチになっていることに気がつきました。これが原因でテープが蛇行し、消去不良になっていた可能性があります。
同サイズの代替品と交換します。表面に亀裂が入っていました。
左右リールを分解し、グリスアップします。
トレイ開閉が正常になったことを確認します。
メカ背面のモータープレートを取り外します。
フライホイールも取り外します。ヘッドを持ち上げるレバーの支点部は固着しやすいため注油します。
新しいベルトを掛けて組み立てます。
元どおり組み付けて動作確認を行いましたが、リールが回転しないため再生不可です。また、モニター表示も消えています。何が起きたのでしょうか?
基板を点検します。電源基板のトランジスタの端子に半田クラックが生じていましたので再半田します。
表面です。かなり発熱するトランジスタのため、放熱板が取り付けられています。こういった箇所は、加熱と冷却の繰り返しで半田クラックが生じます。
正常に動作するようになりました。
ミラーカセットを用いてテープの走行状態を目視点検します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
再生ヘッドのアジマス調整を行います。
録音ヘッドのアジマス調整を行います。
録再バランス調整を行います。
聴感で録再状況を確認し、修理完了です。