SONY製DATデッキ、DTC-55ESの修理依頼をいただきました。
発売当時に新品購入し、あまり使用せずにそのまま30年ほど保管状態にあったということで、現状は不動品となっています。
SONYのDATデッキのうち、500ESからこの機種までは、故障状態で動作確認を行うと、グリス固着によりギヤを破損することがありますので、注意が必要です。
カバーを開けてメカを取り出します。
かなり長期間不使用状態でしたので、回転ヘッドの固着が心配でしたが、まったく問題はありませんでした。
メカを裏返して基板を取り外します。
モーター類やギヤ類を分解していきます。
可動式のテープガイドを駆動するリングギヤです。スライドする部分が固着していましたので、CRCでグリスを溶かしながら慎重に処置を行います。組み立て時はギヤ類の可動部にグリスアップします。
リールユニットです。
リールを脱着してグリスアップします。使用期間が短かったためブレーキパッド類に摩耗は見られません。
カセットホルダーを切り離します。
硬化しているピンチローラーを交換します。
標準のスポンジ製ヘッドクリーナーは、経年による性状の変質によりドラムの表面を侵しますので、撤去します。
幸いにもダメージはありませんでした。
中央はカセットの検出スイッチです。接触不良が起きやすい箇所ですので、接点復活剤を処置します。
メカの動作状況を検知するロータリーエンコーダーですが、ギヤが割れています。このままでは不動になります。
ワイヤーを埋め込んで補強します。
テーパー状になっている凸部を少し削って、ギヤを接着固定します。
メカを仮接続して動作確認を行います。再生OKですが、
早送り巻き戻しに問題が見られます。DATデッキの場合、早送りや巻き戻しの操作ボタンを押すと、テープの状況によって異なりますが、リールが1・2秒低速で回転した後、高速回転に移行します。しかし、いつまでたっても低速回転のままです。この症状はこれまで何度も経験していますので、原因はわかっています。
原因は、キャプスタンモーターユニットの故障ですので、スペア品と交換します。
蛇足ですが、SONY製のDATデッキの場合、ごく一部の機種を除いて、「U-17A」「U-17B」という二つのタイプのキャプスタンモーターユニットが存在します。違いは取り付けビスの位置だけです。
今度は大丈夫です。
モード別、入出力別の録再状況を確認し、修理完了です。