SONY製3ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、TC-K75の修理依頼をいただきました。
テープ走行が1秒で停止するということです。事前に動作状況を撮影したビデオをお送りいただいたところ、カウンターが動いていませんでした。カウンターが動かないとオートストップが働きますので、それが原因と思われます。おそらくリールの回転をカウンターに伝達するベルトが伸びてしまったのでしょう。最初は、このベルトの交換のみということで考えていましたが、修理を進めていくと色々と不具合を抱えていることがわかりました。
電源ONの状態ですが、カセットの窓を照らすハウジングランプ、メーターランプともにまったく点灯しません。それでも時折、下の写真のように僅かにメーターレベルが点くことがあります。
再生ボタンを押した直後にリセットボタンを何回か押すと、カウンターが回り出してテープ走行も正常に始まりました。しかし、十秒程度で停止してしまいました。また、その間、音は出ましたがレベルメーターは振れませんでした。
まずはランプ等の修理を行います。レベルメーターが振れないのは、電源に問題があると思われます。
回路図を見ながら、点検を行うと、電源回路のヒューズ抵抗が故障していることがわかりました。27Ωが500Ωオーバーになっていましたので交換します。
これでレベルメーターは正常に復旧できました。しかし、目盛盤は暗いままです。
指差ししているのは、ハウジングランプです。この機種は、ハウジングランプとメーターの目盛盤ランプは、直列に接続されていますので、どちらかが切れると両方とも点かなくなります。
フロントパネルを取り外します。
ここにランプがあります。プリズムの原理で目盛盤を照らしています。
電球を交換しました。6Vです。ついでにハウジングランプも交換します。
メカを取り出しました。
硬化し伸びたカウンターベルトを交換します。
再生用のアイドラーゴムもカチカチに固まっていますので交換します。特殊な形状ですので、普通のゴムリングを接着固定しました。
メカを元に戻して動作確認を行います。しかし、不定期に停止します。
リールベルトのスリップが原因でしたので交換します。
これで途中停止することは無くなりましたが、少し気になっていたことがあります。再生を開始した直後、正常な速度に安定するまで、少しもたつきます。
キャプスタンベルトが劣化していて、再生開始時の負荷が掛かった瞬間にスリップしているようです。
キャプスタンベルトはメカを降ろさずに交換可能ですので、支障となるパーツを分解し、
新しいベルトに交換します。折長125mmと110mmです。
立ち上がりは良くなりましたが、テープ後半で音揺れが発生するなど走行が不安定です。
ピンチローラーの状態に問題があるようです。特に左側は硬化がかなり進行していました。結局再度メカを降ろして交換します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の調整を行います。
再生ヘッドのアジマス調整を行います。
録音ヘッドのアジマス調整を行います。
バイアスキャリブレーション後にバランス調整を行います。
録再状況を耳で確認し、修理完了です。