SONYのDATデッキ、DTC-2000ESの修理依頼をいただきました。
故障後、長期保管状態にあったとのことです。
イジェクトボタンでリッドは開きますが、すぐに閉まってしまいます。カセットホルダーのグリス切れが原因です。
カバーを開けます。
メカを取り出して、カセットホルダーのプラスチックパーツ同士が擦れる箇所にシリコングリスを処置します。
純正のスポンジ製ヘッドクリーナーはヘッドを痛めますので撤去します。すでに性状が変質し、ボロボロの状態でした。
さきほどのスポンジ製クリーナーによって、ヘッド表面の一部が浸食されザラザラしていますので、研磨します。
一旦、本体に仮接続して動作確認を行います。開閉の不具合は解消されましたが、テープ走行しません。キャプスタンモーターが回転しないことが原因です。
操作ボタンを押した時に時折、ディスプレイが暴走します。2000ESの持病ですが、操作スイッチの接触不良によりマイコンが誤作動することが原因ですので、後ほどスイッチの交換を行います。
メカ底部のMD基板を取り外します。
基板上の電解コンデンサー数か所に液漏れの形跡が見られます。基板の一部が浸食されていますので、導通のチェックを行います。
電解コンデンサーを交換中に、大変なことに気がつきました。写真の爪楊枝の先端部、1-2mmほどのチップ型抵抗が液漏れの影響で脱落しています。問題は、パーツの紛失ではなく、基板のパッド(半田付けする箇所)が腐食していて、半田付けが不可能になっていることです。
サービスマニュアルを見ながら、傷んだパッドと接続されている他の半田付け可能な端子に抵抗を取り付けます。チップ型のトランジスタの0.5mmほどの端子への半田付けは、老眼には厳しい作業でした。
すべて交換・点検を終えました。
メカの整備に移ります。構成ユニットを分解します。
可動式テープガイドを駆動するリングギヤですが、製造時に塗布されたグリスが固まって固着しています。CRCでグリスを除去清掃後に注油します。
硬化変形しているモードベルトを交換します。
2DDリールユニットを分解します。
ブレーキパッドの状態と効きを点検します。
カセットホルダーを取り外します。
硬化しているピンチローラーと、割れやすい留め具を交換します。
白色のカセット検出スイッチに接点復活剤を処置します。
動作確認を行います。テープ走行可能になり音も出ました。
ディスプレイ表示暴走の修理を行います。フロントパネルを取り外します。
ディスプレイ基板を取り出します。
タクトスイッチを交換します。
元通りに組み付け後、すべてのボタンが正常に作動することを確認します。
モード別、入出力別の録再状況を確認し、修理完了です。