先日、当店でカセットデッキを修理された方から、2台目のご依頼です。
6年ほど前に動作品として購入されたという、SONY製3ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、TC-K222ESGです。
バランス不良、ピンチローラーの劣化などが見られるということです。
左側のピンチローラーの状態が悪く見えます。
バイアスキャリブレーションや再生等はとりあえず可能な状態です。
カバーを開けます。
消去ヘッドのコネクタを引き抜こうとしたところ、根元がグラグラしていました。
基板を取り外します。半田クラックではなく、プリントパターンが剥がれそうになっていました。コネクタにはロックが掛かるようになっていますので、引き抜くときに無理に揺すったりするとこのように基板を痛めます。補強&バイパス処置を行います。
メカを降ろして分解を進めます。
調整式になっている左側のピンチローラーアームの位置を測定すると、1mmほど前方にせり出していることがわかりました。この点について、オーナー様に確認したところ、テープが傷むという症状を改善するために処置されたということです。
アームを脱着してピンチローラーを交換します。
ヘッドの調整ネジに接着剤が塗られています。嫌な予感がしましたので、よくよく観察すると、ヘッドの位置が大幅にズレていました。これは、修理販売店で走行不良を解消するためにされたのだと思われます。なお、元に戻らなくなりますので、ヘッド調整ネジは、むやみに触ってはいけません。
ヘッドの調整を行うため、ノギスでは測定できな箇所に使用するシックネスゲージを購入しました。
手元にあるジャンクメカ2台のヘッドクリアランスを測定し、それを参考に調整します。調整したのは手前側に0.3mmほどです。
キャプスタンモーターユニットを切り離します。
モーターユニットを分解します。
基板上の電解コンデンサーを交換します。
新しいベルトを掛けて組み立てます。
メカフロント部を分解します。
以前ベルト交換された際にクリーニングされていないようで、溶けたベルトでかなり汚れています。
綺麗に清掃し、新しいベルトを仮掛けします。
ロータリーエンコーダーを分解します。
汚れた接点を研磨清掃し、スライド接点専用グリスを処置します。
オートセレクタ用のスイッチ接点を磨きます。
組立を進めます。左側のピンチローラーは製造時の位置に調整します。
(ヘッド調整に備えてカセットホルダーは取り付けていません)メカを仮接続して動作確認を行います。かなりクリアな音ですので、ヘッドの調整結果は良好のようです。
ミラーカセットを用いてテープの走行状態を目視点検します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し、速度が許容範囲内に収まっていることを確認します。
ヘッドアジマスです。ピンチローラーとヘッドを調整した後ですが、奇跡的に狂いがありませんでした。
バイアスキャリブレーション後に録再バランス調整を行います。
また、ヘッドやピンチローラーを調整した後は、A面を録音後にテープを裏返して録音し、クロストークや消去不良(A面とB面の干渉)がないことを確認します。
テープポジションの異なる数種類のテープで録再状況を確認し、修理完了です。