SONY製3ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、TC-K777の修理依頼をいただきました。
7年ほど前は動作していたが、当分の間使用しないうちに故障したということです。
イジェクトできません。ピンチローラーアームが下がり切っていないようです。
機器を裏返して、ピンチローラーアームを停止時の位置に動かします。
これでイジェクトできましたが、動きが重いため、手でアシストしてやらないとトレイが開きません。
カバーを開けてメカを取り出します。
背面から分解していきます。
ようやくリールユニットを取り出しました。
再生用のアイドラーを取り外します。
プラスチックのように硬くなったゴムリングを交換します。(シリコンゴム製のため白色です。)
硬化しているリールベルトを交換します。
リールユニットを分解します。
早送り巻き戻し用のアイドラーゴムを交換します。
可動部にグリスアップします。
元通り組み立てていきます。新しいキャプスタンベルトと交換します。
カセットホルダーを取り外します。
左側のピンチローラーが固着して動ません。
CRCを処置しながら慎重に取り外します。傷が付いていましたので、以前脱着したことがあるのでしょうか?
ピンチローラーアーム取り付けシャフトは、グリスが乾いて白くなっていますので、アルコールで拭き取ります。
ピンチローラーは弾力がありますので、表面を研磨し、専用クリーナーで清掃して再利用します。右側も同様です。
ストレスなく動くようになりました。
カセットホルダーを組み付けましたが、どこか固着しているようで自然には開きません。
分解し、注油します。向かって右下の差し込み部が固着していました。
動きが軽やかになりました。
メカを元に戻して動作確認を行います。
ここで、バックランプが切れていることに気がつきました。最初は点灯していたような気がしますが、たまたま寿命を迎えたのでしょうか?
再度メカを降ろして、LED化します。
明るくなりました。ところが、再生を行っていると音が途切れることがあります。
また、キャリブレーションの動作時に、レベルメーターが振れなくなることがあります。(写真は正常なときの状態です)
オーディオ基板を押し付けると一時的に回復します。銅板のアースラインの接触不良が疑われます。
底板を取り外します。予想通り銅板の端子部に半田クラックが見られますので、銅板を固定しているすべての箇所を再半田します。
これで治ったかと思いましたが、昼時になったので一旦電源を切り、休憩後に動作確認を行うと、なぜか音が小さくてノイズ混じりになっていました。
疑わしいのは、切り替えのリレーです。この辺りをつつくと、状態が変化します。
脱着して接点を磨きます。
もう一個、同じリレーがありますので、同様の処置を行います。
不具合は改善されました。念のため少し様子を見ます。
トルクとバックテンションを点検します。リールベルト交換の影響でしょうか?基準の倍ほどの巻き取りトルクになっていましたので調整します。
テープ速度が許容範囲内に収まっていることを確認します。
再生ヘッドのアジマス調整を行います。
録音ヘッドのアジマス調整を行います。
バイアスキャリブレーションが偏っていて、調整範囲を超えるテープがありましたので、ニュートラルな状態に合わせます。マクセルのUD1でツマミがセンターの位置になるのがベストです。
テープポジションの異なる数種類のテープで録再状況を確認し、修理完了です。