SONY製3ヘッドシングルキャプスタンカセットデッキ、TC-K710Sの修理依頼をいただきました。
今回は、ドナー機とともに2台お送りいただきました。そのうち状態の良い1台を修理しますが、操作ボタンのテカリの少ない方が使用時間が短いだろうと判断し、そちらを選択しました。
トレイは開きますが、内部でモーターが高速回転する音が聞こえますので、キャプスタンベルトが切れていると思われます。
カバーを開けてメカを取り出しました。
予想通りキャプスタンベルトが溶け切れています。そのため、モーターが無負荷になり高速回転していました。
ホルダーと化粧パネルを取り外します。
まず気になるのは、ピンチローラーです。
交換を行います。ゴムの劣化も問題ですが、このタイプはプラスチックのコアの周りに充填剤が用いられていて、経年により偏心します。
事前にお聞きしていましたが、消去ヘッドに取り付けられているテープガイドが脱落したため、接着固定されています。これは問題ありません。
モータープレートを取り外します。
この機種はクオーツロック機です。そのため、フライホイールに一部切り欠きのある模様が付されていて、その回転数をセンサーで読み取って速度を制御しています。
溶けたベルトが固まりかけていて頑固に付着していましたので、アルコールでゴシゴシと磨きます。
モータユニットを取り外します。
ベルトが伸びています。また、表面に油分が浮き出ています。
プーリーを脱脂し、新しいベルトを仮掛けします。
ロータリーエンコーダーを取り外し分解します。
汚れた接点を研磨清掃し、スライド接点専用グリスを塗布します。
オートセレクタ用のスイッチ接点を磨きます。
新しいベルトを掛けて組み付けます。
メカを本体に戻して動作確認を行います。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し、速度が許容範囲内に収まっていることを確認します。
ヘッドアジマスの調整を行います。
バイアスキャリブレーション後に録再バランス調整を行います。
テープポジションの異なる数種類のテープで録再テストを行い、修理完了です。