SONYのTC-KA3ESです。
つい先日、大手リサイクル店で購入されたものの、テープを痛めることがあるということです。
さらに珍しい症状として、テープトップまで巻き戻してしまうと、「ガッ」という音はしますがイジェクトできません。
ただし、少し早送りした後では正常に開きます。以前も同じような事例を経験していますので、どこに不具合があるのかはわかります。
カバーを開けてメカを取り出します。
分解を進めます。
リールをロックする白色のパーツが上に上がったままです。それでイジェクト時にリールがロックされずに回転するためトレイが開きません。以前同じ症状を経験したときは、白色のパーツが変形して引っ掛かっていたためでしたが、今回は人為的な故障でした。
何故かというと、白色のパーツを押し下げるためのバネが外れていたからです。以前修理した方のミスです。普通、ここは分解しませんが、慣れていないために一度分解し、バネをかけ忘れたものと思われます。
続いて、調整式となっている左側のピンチローラーの位置を測定します。21.50mmですが、この数値では完全な調整不良ですのでテープを痛めるのは当然です。SONYのESモデルに詳しい方であればこんなミスはしません。
ピンチローラーアームとアイドラーを取り外します。
ゴムローラーを交換します。
ここでワンポイントメモです。写真左はこのデッキのアイドラーですが、現状は正常です。一方、右は以前修理した機器から取り外したアイドラーですが、ギヤが欠けています。SONYのこのギヤには2種類の材質のものが存在し、この色のものは、経年劣化により歯が欠けます。
オーナー様の了解が得られましたので代替品と交換します。
さらに分解を進めます。
キャプスタンモーターユニットを分解します。
モーター基板上の電解コンデンサーを交換します。
新しいベルトを掛けて組み立てます。
メカのフロントユニットを分解します。
ベルトの掛かるプーリーを脱脂し、新しいベルトを仮掛けします。
ロータリーエンコーダーを取り外し分解します。
汚れた接点を研磨清掃し、スライド接点専用グリスを塗布します。
オートセレクタ用のスイッチ接点を磨きます。
元に戻して動作確認を行います。
イジェクトの問題も解消されました。
ミラーカセットを用いてテープの走行状態を点検します。
ヘッドアジマスの調整を行います。
バイアスキャリブレーションの作動状態を点検し、録再バランス調整を行います。
テープポジションの異なる数種類のテープで録再状況を確認します。
以上修理完了です。