ナカミチのカセットデッキ(かなり古いものは除きます)のデッキメカには、ナカミチ製(サイレントメカ)とSANKYO製のもののいずれかが搭載されています。
そのうち、比較的後期に発売された機種に搭載されているのは、KENWOODなどにも搭載されているSANKYO製のメカです。写真はCR-40です。
このメカのウイークポイントはいくつかありますが、そのうち、悩ましいのがリールモーターの故障です。再生中に突然モーターが停止しオートストップが働きます。この状況は、症状が軽い初めの頃はテープの巻き終わり辺りに発生し、そのうち巻き始め部分でも起きるようになります。ただし、早送りと巻き戻しでは発生しません。
これが問題のモーターですが、なぜモーターが停止するかというと、内部の接点の接触不良が原因です。また、テープの終盤に起きやすい理由はというと、
テープの巻き始めと巻き終わりでは、右側に巻かれているテープの量が異なります。テープは一定の速度で走行して右のリールに巻き取られていきますが、右側のテープの巻かれている直径が大きくなるにつれて、右側のリールの回転(リールモーターの回転)は次第に低速になります。
今回の記事作成にあたり、再生時のリールモーターの回転数の測定を行ったところ、先ほどのモーターは、無負荷状態では、6Vの電圧で毎分2800回転しますが、左写真の状態では毎分約150回転、右写真の状態では毎分約70回転と超低速になります。
一方、モーター内部の接触状態が悪くなっていると、回転しているときに一瞬、接点が絶縁状態になります。ただし、回転しているため、すぐに接触が回復し、回転を続けます。そのため、早送りや巻き戻しでは停止しません。しかし、テープ終盤で回転が超低速になったときは、接触が回復する間もなく停止してしまいます。
こういった場合の対処方法としては、例えばテープを抜き取ったカセットをセットして、半日から一日程度、早送り状態にしておくことにより、自己回復することもあります(機種によってはできないことがあります)が、それも限界があります。
ではどうするのかというと、モーター交換、またはモーターのオーバーホールということになります。
当店ではこれまで、状況に応じて両者とも実施してきましたが、交換の場合は、同じ規格のモーターは入手できないことから類似モーターを使用することになります。しかし、交換に際しては取付穴の加工を伴うことや、モーターの入手先の確保などの課題があります。
前置きが長くなりましたが、手元に故障したSANKYOモーターの在庫が増えてきたという状況も踏まえ、在庫モーターのオーバーホールを行い、今後の修理に備えたいと思います。
故障したモーターです。数ボルトの電圧では普通に回転し続けますが、電圧を下げていくと毎分150回転程度で停止します。
このモーターの分解は簡単です、マイナスドライバーを差し込める箇所が2か所ありますので、こじってバックプレートを外します。
ここが肝心です。ローターを引き抜くときは、バックプレートを引っ張るのではなく、モーターシャフトを押し付けます。なぜかというと、バックプレートを引っ張ると、繊細なブラシを痛めるからです。
整流子とブラシが離れないように慎重にローターを取り出します。
バックプレートに開口部がありますので、そこに爪楊枝を差し込んでブラシを広げます。
ちょうどこのようにブラシを広げます。
ローターを引き抜きます。
整流子が真っ黒です。
ワッシャーを外します。
研磨材を用いて整流子を磨きます。最後にアルコールで清掃します。
続いてブラシです。
確実なのは、ブラシを取り外して作業を行うことです。
爪楊枝の先端に研磨剤を付けてブラシを傷めないように磨きます。
もう片方も同様です。
組むときも先ほどと同様、ブラシを広げてからローターを差し込みます。
整流子がブラシ部から抜けないように慎重にカバーに差し込みます。
バックプレートをはめ込みます。
慣らし運転を半日程度行い、低速運転でも停止しないことを確認し、作業完了です。