ナカミチ製3ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、Cassette Deck1.5の修理依頼をいただきました。
再生が途中停止するということですので、リールモーターの故障が疑われます。これまで他店で2度ほど修理されたということですが、短期間で再発したということで当店にご依頼がありました。
なかなか症状が再現されませんでしたが、忘れた頃にガチャっという音と共に停止しました。
その時のテープの状況を確認すると、モーター故障時のような弛みは見られません。
停止する瞬間の状況を目視で確認したいのですが、なかなか症状が再現しません。いつまでもデッキと睨めっこをするわけにはいきませんので、三脚にスマホをセットして再生中の状況を録画します。
しばらくして症状が再現されましたので、録画を再生します。リールモーター故障の場合は、初めに右側のリール回転が止まり、少ししてヘッドが下がり停止します。しかし、今回はそうではなく、オートストップが働いたときと同じで、リールの回転停止とヘッドが下がるのが同時という状況でした。
オートストップは、リールの回転をセンサーで検知して作動しますが、センサーの誤作動や故障とは考えにくいので、どこかに接触不良が起きていると思われます。
カバーを開けて、メカに接続されているコネクタを軽く揺すりましたが、問題は発生しません。ということは、メカ本体でしょうか?
メカを降ろします。
今回の故障とは関係ありませんが、化粧パネルを取り外したところ、バックテンション用のベルトが無くなっていましたので取り付けます。以前の修理の際に掛け忘れたのでしょうか。
センサーの汚れという可能性はゼロではありませんので、点検・清掃を行います。
最も疑わしいのは、このリーフスイッチです。
接点が酸化して真っ黒でしたので清掃します。
イジェクト検出スイッチ接点を磨きます。
メカを本体に戻して動作確認を行います。今回は念のため2日ほど運転します。
不具合は再現されませんでしたので、調整に移ります。315Hzの信号が記録されたテープを再生し、速度の調整を行います。
再生ヘッドのアジマス調整を行います。
録音ヘッドのアジマス調整を行います。
テープポジション別に録再バランス調整を行います。元々のRECLEVELのセッティングがかなり小さめだったので不思議に思っていましたが、後ほど、それは回路の不具合が原因であることが判明しました。
CDを録音してのテストを行って修理完了、というところでしたが、モニター再生すると音質が変です。低音がスカスカです。今まで高音が出ないという故障は数多く見てきましたが、今回のようなケースは初めてです。
100Hzの信号を録音します。
再生モニターに切り替えるとレベル低下が起こります。しかも左右チャンネルとも同じ状況です。ほかのデッキで録音したテープでも同じ状況でしたので、再生に問題があるようです。
2時間ほどかかりましたが、点検の結果、メカ背面に取り付けられている、再生回路序段のアンプに不具合があることがわかりました。
220μFの電解コンデンサーの端子付近に液漏れの形跡があります。こんなところに落とし穴が待っているとは思いもしませんでした。
電解コンデンサーを交換します。最初はどちらか片チャンネルのみの故障だったと思われますが、同じような時期に製造された部品は、ほぼ同時期に同じ故障が起こりますので、当店が受け取った時点では左右チャンネルとも故障していたということになります。
無事復旧しました。最後にテープポジションの異なる数種類のテープで録再状況を耳で確認し、修理完了です。