少し前に、当店でパイオニアのデッキを修理された方からのご依頼です。
ナカミチのCR-40です。
電源を入れると、メカの辺りから「シャリシャリ・・・」という異音が鳴ります。音の種類や状況から、フライホイール(キャプスタン)の回転に関係があるようです。
フライホイールの状況を観察するため、底板を取り外しました。
キャプスタンモーターのコイルとフライホイール(磁石)の間に何かが挟まっています。
1.5mmほどのスチールボールです。見覚えのある部品ですが、その場所にあったということは普通では考えられません。
私の予想が当たっているか確認するため、メカを降ろしました。
化粧パネルを取り外します。予想は的中しました。右写真の中央部にあるはずのスチールボールがありません。
正常な状態に戻しました。このスチールボールは、上下動するヘッドブロックを押さえるとともに、スムーズに動くようにするためのものですが、自然に脱落するということは考えられません。しかし、人為的なものという形跡もありません。なお、このスチールボールが無いことで、これまでヘッドブロックが不安定な状況であったのは間違いありません。
ここでもう一点、不具合が見つかりました。バックテンションベルトが無くなっています。この状況では、テープ走行が不安定になり、テープを痛めたり、正常に再生されないといったことが起こります。
ベルトは溶けてリールに絡みついていました。
リールとアイドラーを取り外します。
トレイ開閉を検知するスイッチ接点を磨きます。
コントロールモーターユニットを取り外します。
酸化して黒くなっている接点を磨きます。
コントロールモーターとリールモーターに直接電圧を印加し、数時間ほど空転させて内部接点の接触改善を図ります。
ここにも溶けたバックテンションベルトが付着していました。
新しいベルトを掛けます。
ピンチローラーとヘッドをクリーニングします。
キャプスタンベルトを交換します。
メカを元に戻して動作確認を行います。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し、速度の調整を行います。
再生ヘッドのアジマス調整を行います。
録音ヘッドのアジマス調整を行います。
バイアスキャリブレーション後に録再バランス調整を行います。
ナカミチはテープポジション別にRECLEVELを調整します。
CDPを接続して録再状況を耳で確認し、修理完了です。