ケンウッドの人気機種、KX-1100Gの修理依頼をいただきました。
電源は入るものの、一切動作しない状態です。
照明のランプは明るく点灯していますが、ディスプレイは僅かに端の部分が薄暗く見える程度です。
カバーを開けて点検を進めます。
最初に目についたのが、過去の修理痕です。指先の電解コンデンサーですが、端子を切断し、そこに接続するという、ユニークな修理手法が採られています。
この機種でトラブルが多発する、C93、C95、C96、C107などの「100μF/10V」とC97、C98などの「470μF/10V」(赤マジックでマーキングしているもの)を交換します。
これが先ほどの以前修理交換された電解コンデンサーです。この機種は、パーツ交換する際に半田面にアクセスするためには、結構大掛かりに機体を分解しなければなりませんので、それを回避するため、端子を切断してそこに接続するという形を採ったと考えられます。
(写真は以前修理したKX-1100Gのものです)ただし、端子の短いパーツでは、前述のような手法では対応できませんので、今回は写真のように基板を脱着して作業を進めます。
主電源の回路に、もう一ケ、故障コンデンサーを発見しました。C108(220μF/25V)を交換します。
これでディスプレイが明るく点灯するようになりました。
しかし、テープ走行は可能になりましたが、肝心の音が出ません。ほかにも故障箇所があるようです。
点検を進めると、オーディオ回路の7.5Vと-7.5Vのラインが死んでいることがわかりました。怪しいのは、指差ししているトランジスタです。なぜなら、周辺の電解コンデンサーがショートモードで故障していたため、過電流が発生した可能性があるためです。
Q29(2SC1740)を取り外して点検します。予想通り故障していましたので、代替品の2SC1815と交換します。
Q30(2SA933)も故障していましたので、代替品の2SA733と交換します。
これで完了と思いまいしたが、まだ音が出ません。しかも、電源を入れたときに、何か焼けるような嫌な匂いがしました。
先ほど交換したばかりのQ30が故障していました。不良品だったのかと思い、再度交換しましたが、また同じように故障してしまいました。ということは、ほかにも不具合箇所があって、その影響を受けているということになります。
点検を進めた結果、ドルビー基板の47μF/10Vがショートモードで故障していることがわかりました。
故障していたのは片CHのみですが、念のため両CHとも交換します。
ようやく音が出ました。今回は「主電源」「オーディオ回路の電源」「ドルビー回路」の3ブロックに故障が見られましたが、おそらく玉突き状態で連鎖故障したものと思われます。
メカの整備に移ります。
化粧パネルを取り外します。バックテンションベルトが切れています。
加水分解で溶け切れたため、ベタベタになってプーリーに付着しています。オレンジクリーナーで除去清掃します。
カセットの検出スイッチの接点を磨きます。
コントロールモーターユニットを取り外します。
メカをコントロールするスイッチ接点を磨きます。
モーターの内部接点の接触改善のため、直接電圧を印加して長時間空転させます。
左右リールとアイドラーを取り外し、リールモーターも同様に実施します。
キャプスタンベルトを交換します。
新しいバックテンションベルトを取り付けます。
オートセレクタ用のスイッチ接点を磨きます。
本体に戻して動作確認を行います。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し、速度の調整を行います。
ヘッドアジマスの調整を行います。
キャリブレーション後に録再バランスが適正であることを確認します。
テープポジションの異なる数種類のテープで録再状況を確認し、修理完了です。