以前、当店をご利用になった方から、新たなご依頼をいただきました。
PIONEER製2ヘッドシングルキャプスタンデッキ、T-3050です。状態としては、動いたり動かなかったり不安定ということです。
カバーを開けました。メカの基本的な構造は、スライド式のトレイを除き、私が所有しているCT-7という機種と同じようです。
操作レバーをドライバでロックを解除して取り外し、フロントパネルを取り外します。これでメカを脱着せずに整備ができそうです。
機器の内部から、折れた樹脂製のビスとナットが転がり落ちてきました。樹脂製のビスは、一般的に、パワートランジスタを放熱板に取り付けるときに使用されます。一体どこから外れたのでしょうか?
少し時間が掛かりましたが、怪しいところを見つけました。
取り外して確認を行います。
やはりそうでした。
手持ちのビスで固定します。
ピンチローラーにテープが巻き付いていましたので除去します。
底板を取り外します。1モーターでキャプスタンとリールを回転させる仕組みです。そのため、モータープーリーに2本のベルトが掛けられていますが、いずれも硬化や伸びが見られます。
キャプスタンベルトです。以前、SONYのデッキを修理した際に海外から取り寄せた、径94mmの平ベルトがジャストフィットです。
リールベルトは径約96mmの1.5mm角ベルトですが、流通していないサイズですのでバンコードで作成します。
そのほかにも、回転センサー用のベルト、カウンターベルト(2本)を交換します。リールトルクに影響を及ぼしますので、きつ過ぎず、緩過ぎずのサイズを選択します。
早送り巻き戻し用のアイドラーゴムを交換します。16*11*2mmが2ケです。
スライド式のトレイの動作が緩慢です。グリス切れかと思いましたが、そうではないようです。
トレイを開けるためのバネの力を、この金属製の円柱のダンパーが回転して吸収する仕組みになっていますが、完全に固着しています。
ユニットを脱着しました。固着部を分解するのに30分ほどかかりましたが、シャフト部を清掃しグリスアップします。
かなり勢いよく開くようになりました。
ピンチローラーは弾力がありますので、表面を軽く研磨して専用クリーナーで処理します。
動作確認を行います。
新たな不具合が見つかりました。PAUSEレバーを押し下げてもロックされません。
わかりました。タイマー機能関連の不具合でした。この機種は、PAUSEを押し下げた状態で電源が入ると、PAUSEボタンが解除される仕組みになっていますが、
レバーのロックを解除する、このソレノイドの動きが悪いため、PAUSEボタンのロックが解除されたままとなっていたためでした。可動部にグリスアップします。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し、速度の点検を行います。0.9%ほど速くなっています。この機種はPLLサーボモーターということで、調整はできない仕様のようですが、聴感上はわからないレベルです。
再生バランスの調整を行います。
ヘッドアジマスの調整を行います。
録再バランス調整を行います。
メーターバランスの調整を行います。
天板に扉がついています。ヘッドとピンチローラーのメンテナンス用です。
録再状況を耳で確認し、修理完了です。