SONY製4ヘッドDATデッキ、DTC-2000ESです。
1年ほど前に入手されたということですが、タイトルの通り不具合を抱えています。
右側のディスプレイが点灯しません。また、モニター切替スイッチをSOURCEにしてもTAPEのままです。これら2点については、以前も同様の事例を扱いましたが、そのときは故障箇所が特定できずに修理不可となったため、今回はこの2点については修理できないという前提で機器をお預かりしました。
再生は可能ですが、テープパスが狂っているようなノイズが混じります。
カバーを開けます。
予想通りテープパスが狂っていますので、後ほど処置します。
念のため、修理できない旨お知らせしていた箇所も点検します。すると、想定外の状況が見られました。これは右側のディスプレイ基板ですが、FL管の半田部にクラックが多数見られましたので再半田します。何が原因でこれほど多くのクラックが入るのかは不明です。
点灯しました。こうなると、モニタースイッチも何とかしたいものです。
切り替えスイッチの不具合の原因ですが、最初にお話しを聞いたときは、コントロールICの故障と思っていましたが、実際に機器を操作してみると、感覚的にはそうではないような気がしてきました。まずは、故障箇所をある程度の範囲まで特定しなければなりません。手間は掛かりますが最も簡単?な方法として、私が所有している2000ESと順番に基板を換装していきます。その結果、右側ディスプレイ基板の故障であることまで特定できました。
回路図を見ながら点検を進めていくと、スイッチにパラレルに取り付けられている0.1μFのコンデンサーが10Ωの抵抗になっていました。つまりスイッチが常時ONになっていたということになります。
このコンデンサーは、おそらく切り替え時のノイズ防止のためのものと思われます。早速交換を行います。
無事治りました。ここまで来るのに朝から修理を始めて夕方までかかりました。これでようやく、基板換装作業でバラバラになっている私の2000ESも元通り組み立てることができます。
メカのメンテナンスに移ります。
裏返して、ドライブボードやモーターユニット、ギヤ類を分解します。
前オーナー時にメンテナンスを受けているようで、リングギヤには固着はありませんでしたが、グリスをCRCで拭き取って注油します。
伸びているベルトを交換して組み付けます。
リールユニットです。ややブレーキの効きが甘くなっています。
分解します。
劣化しているブレーキパッドを張り替えます。
MDボードの電解コンデンサーに液漏れはありません。
カセットホルダーを取り外します。
ピンチローラーの留め具が脱落しているため、簡単に外れてしまいます。
ピンチローラーの状態は良好です。
シリコンチューブを留め具として固定します。
カートリッジの検出スイッチに接点復活剤を処置します。
カセットホルダーの可動部にシリコングリスを塗布します。
本体に仮接続して動作確認を行います。
テープパスを調整します。
モード別、入出力別の録再状況を確認し、修理完了です。