以前からお取引いただいている方から、新たなご依頼をいただきました。
SONYのDTC-2000ESです。10年ほど前にソニーサービスでピンチローラーや劣化電解コンデンサー、スイッチ類の交換といったメンテナンスを受けたということです。
テープをセットします。ローディングは正常ですが、「ブーーー」という再生音が出力されます。
リッドを外しました。テープ走行ができないようです。
カバーを開けてメカを取り出します。
メカとコントロール基板に接続されているフラットケーブルが傷んでいます。以前の修理の際の扱いに問題があったのは間違いありません。
参考までに他の機器のフラットケーブルの写真を掲載します。端子が露出しているのは片面のみで、通常、その裏面には、
端子部の補強のために薄いビニール板が貼り付けられています。しかし、この機体のケーブルは、そのビニール板が外されていたため端子部が傷んでしまいました。
ビニール板を接着剤で貼り付け、プレスした状態て一晩待ちます。これでなんとか補修することができましたが、前修理者の処置にはさすがに憤慨してしまいました。
このスポンジ製ヘッドクリーナーも10年前に交換されたようですが、すでにボロボロになっています。そもそも、このスポンジはヘッドを痛めますので、交換ではなく撤去しなければなりません。
メカを裏返してドライブ基板を取り外します。
電解コンデンサーの一部は交換済みです。
リールユニットです。ブレーキの引きずりやリールの固着が無いことを確認します。
カセットホルダーを取り外します。
ピンチローラーがプラスチックのように硬化しています。
ゴムを張り替えたものと交換します。以上メンテナンスを実施しましたが、走行不可は改善されませんでした。残るはキャプスタンモーターです。回路の故障でないことを祈ります。
手持ちのキャプスタンモーターユニットと交換します。
無事テープ走行可能になり、正常に再生音が出力されるようになりました。しかし、LONGモードで録音されたテープでは、ノイズが混じることがあります。
ヘッドの信号を点検すると、テープパスに狂いがあることがわかりました。
調整後です。ノイズも発生しなくなりました。
残るメンテナンスを行います。再度ドライブ基板を取り外します。
モードベルトの点検を行います。パッと見、問題は無いように見えますが、
劣化してボロボロでしたので交換します。
リングギヤの固着が無いことを確認します。
ホルダーの可動部にグリスを処置します。
最後にもう一点、操作スイッチの誤作動があります。事前のお話では、早送りと巻き戻しが逆転するということでしたが、当店のテストでは、ストップボタンで再生が開始するといった状況が見られました。これはスイッチの接触不良が原因ですが、このまま使用を続けると、近いうちに2000ESの持病である表示暴走が発生するのは間違いありませんので、交換が必要です。
フロントパネルを取り外します。
基板を脱着してタクトスイッチを交換します。
モード別、入出力別の録再状況を確認し、修理完了です。