SONYのDATデッキ、DTC-ZAESの修理依頼をいただきました。
10年以上、保管状態にあったということですが、今回は故障のオンパレードという感じでした。
CAUTION表示が出て動作しません。中にはテープが閉じ込められています。
カバーを開けました。テープが引き出された状態になっていますので、リール周りに不具合があることがわかります。
手動でトレイを開いてテープを取り出し、リールを回してみたところ、固着していました。ブレーキパッドが張り付いてしまっているようです。
メカを降ろします。
裏返してドライブ基板を取り外します。
リールユニットです。固着している側を強く回すと、スルッと回るようになりました。
普通は、ここに剥がれたブレーキパッドが貼り付いているのですが、今回はそれはありませんでした。
分解点検を行います。剥がれたパッドが見つかりました。
パッドを張り替えます。
メカを分解します。
グリスが固まりかけていますので、CRCで溶かして除去し注油します。
硬化変形しているベルトを交換します。
カセットホルダーを取り外します。
カチカチに硬化しているピンチローラーを交換します。
白色のカートリッジ検出スイッチに接点復活剤を処置します。
伸びたローディングベルトを交換します。
カセットホルダーの可動部にグリスアップします。
動作確認を行います。しかし、再生を開始すると電源が落ちます。電源部の接触不良です。
このトランジスタがグラグラしています。こういった発熱する背の高いパーツには半田クラックが生じやすいという傾向があります。
基板を取り出します。
半田クラックが起きていますので再半田します。
電源が落ちることは無くなりましたが、ときどきテープ走行ができなくなります。
キャプスタンモーターを回してみると、少し引っ掛かりを感じます。
キャプスタンモーターを取り外します。
キャプスタン先端を支えるパーツの位置が少しズレたため、モーターのマグネットとコイルが干渉していたようです。接着補修します。
これで走行は正常になりましたが、再生時にノイズが混じったり、テープによっては音が出ないことがあります。ヘッドチップを直接クリーニングしましたが一向に改善されません。
オシロスコープを接続し、ヘッドの信号を点検します。ヘッドチップ2ケのうち、1ケが断線しているようです。早速オーナー様にその旨報告し、ヘッド交換を行うこととなりました。
メカを取り出し、スペアヘッドを用意します。まったく同じヘッドは入手困難ですので、他機種用となります。
ヘッドの回転部分は同一ですが、モーター部分とアース端子の形状が異なります。
モーターのパーツを取り出して交換します。
アース端子も交換しました。
動作確認を行います。ヘッドからの信号も正常です。
テープパスを調整します。また、閉じ込められていたテープを使用し、正常に再生されることを確認します。
モード別、入出力別の録再状況を確認し、修理完了です。