最も売れたDATデッキと言われているDTC-57ESです。
初代DTC-1000ESから500ES、300ES、55ESなどを経て、この機種から新たに開発されたメカニズムを搭載しています。
「音が出ない」ということですが、再生ボタンを押してもリールが回転していません。
メカを取り出す準備を行います。点検用の端子が追加されていますので、一度は修理されているようです。
メカを覗いてみると、標準のスポンジ製ヘッドクリーナーが付いていますが、トラブルの元ですので後ほど撤去します。
この機種と59ESでは、電源部の黒いニチコン製コンデンサーが要注意です。カバーを開けたときに特有のにおいがしましたので、おそらく液漏れが起きていると思われます。
電源基板を取り出します。裏面を見てみると、
やはり液漏れでプリント面が侵されています。アルコール清掃し、導通をチェックします。断線はありません。
普通はコンデンサーを外すまで液漏れに気づかないでしょうね。新品に交換します。
メカを取り出してトレイを切り離します。
スポンジ製ヘッドクリーナーを撤去します。案の定、性状が変質しボロボロになっています。これがヘッドを腐食させるのですが、幸いにもこの機体では影響は及んでいませんでした。
メカを裏返して分解していきます。
基板、リールメカを切り離すとテープガイドを駆動するギヤ類が現れます。
ギヤを固定しているパーツに割れが生じて脱落寸前です。
同じパーツに交換しても同じ結果になりますので、Eリングと置換します。
可動部の摩擦を極力減らすために、分解して必要な箇所にシリコングリスを塗布します。
リールメカも同様に分解しグリスを施します。
ヘッドの信号を処理するRFアンプです。57ESのウィークポイントのひとつですので点検を行います。実装型電解コンデンサーの端子に腐食はまったく見られません。以前に交換されたものと思われます。
元通りに組み立てて動作テストを行います。初めは無音でしたが、長めのヘッドクリーニングにより回復しました。ヘッドの汚れはクリーニングカセットを用いますが、音が出ないほど汚れている場合は数秒程度では汚れは落ちません。
各モードでの録音再生状況を点検し、
修理完了です。