以前オークションで入手した故障機の修理をしようと、トレイを開けるとテープが閉じ込められていました。
見たことのないデザインのテープです。カセットテープ全盛期には、有名無名、数えきれないぐらいの種類のテープが発売されていて、中には結構粗悪なものもありましたので、これもそういったもののひとつと、最初はたいして気にしなかったのですが、ふと目に留まるものがありました。
「Fe-Cr POSITION」とあります。これは見過ごすわけにはいきません。
フェリクロムは、SONYが従来のクロムタイプを改良し開発したバージョンで、1970年代後半頃にメタルテープが出現するまでの数年間製造されていましたが、他社製というのは初めて見ました。
当時私は学生でしたので、高価なフェリクロムのテープはSONYの「DUAD」を唯1本のみ所有していました。しかし、当時は使用していたデッキも安価なものでしたので、テープの性能を引き出すことができなかったのか、あまり良い印象はありませんでした。
SONY以外のメーカーのフェリクロムということで、突然興味がふつふつと湧きだしました。デッキの修理をそっちのけで、そのテープに何が録音されているのかが気になりました。
早速、XK-009で再生しようと巻き戻したところ、
テープの頭で切れてしまったようですが、こんなことでは諦めません。テープの切り貼りはオープンリール時代から手慣れたものです。
分解しました。切れたのではなく、ハブの留め具が外れてしまっています。
プラスチックが劣化して割れていましたので、他のテープからハブを移植しました。
さあ再生と思った瞬間、あることに気づきました。テープ種別の検出孔がありません。これではXK-009のようなオート機はノーマルテープと判別され正常に再生されません。
ということで、DRAGONの出番です。再生ボタンを押すと、しばらくして曲が流れました。ポップス系の女性ボーカルですが、まったく聴いたことがない曲でしたので、ここはスマホの力を借ります。
流れている曲をスマホのマイクで拾って曲名を検索してくれるアプリです。1曲目は判別不可でしたが、2曲目でヒットしました。
アグネス・チャンの「シャイン・オン・ミー」という曲でした。1980年頃の曲ですが、古さを感じない曲調でしばらくの間、聴き入ってしまいました。
肝心の音質ですが、テープの劣化もほとんど無く、良好なレベルでした。
カセットテープ、まだまだ健在ですね。