今回、PIONEERのDATデッキ、D-05(2台)の修理依頼をいただきました。普及価格帯の設定でありながらハイサンプリング機能を備えた超高性能機ですので、これまで当ブログで取り扱いが無かったのが不思議なくらいです。
オーナー様はDATの愛好家で、現在も録りためた数百本のテープの再生に使用しているとのことですが、SONY製のデッキは比較的故障が多い(未整備品のメカに関しては確かにその傾向は強いと思います)ことから、近年は高級DAコンバーターにPIONEERのD-05を組み合わせるのが基本セットとのことです。
確かに、D-05は、上級機のD-07Aとメカは共通ですので、DAコンバーターに外部出力するのであれば合理的な考え方と思います。
オーナー様は現在、D-05の故障機を4台お持ちとのことで、今回はそのうち2台をお送りいただきました。
それでは早速修理に移ります。
1台目です。再生時に時折ノイズが混じるとのことです。
テープ走行は問題ありませんが、再生すると時々音が途切れます。
ノイズ混入は、ヘッドまたはヘッドアンプ(RFユニット)の不具合により起きることがほとんどです。
まずはメイン基板にオシロを接続してヘッドからの信号を見てみます。
写真は正常な状態ですが、眺めていると波形の左側が不安定に揺れます。
ヘッド左側のテープガイドの調整を行いたいのですが、再生時は左側が隠れてしまっていますので、一旦イジェクトし、少しづつ回しながら波形を確認するという作業を繰り返します。
続いてメカを取り出し、背面に取り付けられているRFユニット基板のメンテナンスを行います。
PIONEERのDATデッキもSONYと同様、このRFユニットに弱点を抱えています。SONYの場合は端子が腐食しているのですぐにわかりますが、PIONEERの場合は見た目ではまったくわかりません。
PIONEERの場合はスペースに余裕がありますので、リード型の電解コンデンサーに交換します。D-07Aと同じ100μF(2ケ)、47μF、22μF、4.7μFの計5個です(ちなみにD-07は100μF2ケでD-07A、D-05とRFユニットの互換性はありません)。ただし、トレイユニットと干渉しないように寝かせて取り付けます。
元通りに組み立てて、各モードでの録再点検を行います。良好です。
続いて2台目に移ります。
この機体は、録音時にノイズが混入するとのことです。はじめに再生状態を確認しましたが、ところどころ音が途切れます。
それでは先ほどと同様にヘッドからの信号を確認します。
左の波形が右と比べると小さいのがわかるかと思います。ヘッドには、2つヘッドチップが取り付けられていて、その信号をデジタル処理して出力されるのですが、そのうち片方に問題が生じています。この状態はヘッドの汚れでも起きますので、まずはヘッドクリーニングを行いましたが、一向に改善される気配がありません。ヘッドの故障(寿命)です。
オーナー様にご連絡し、ヘッド交換のGOサインがでましたので作業を進めます。
以前D-05ジャンク機から取り出したヘッドを移植します。トレイユニットを取り外さずに作業できます。
取り外したヘッドです。ヘッドチップの状態を拡大鏡で点検しましたが、目視では特に異常は認められませんでした。
移植完了です。1台目と同様にRFユニットの電解コンデンサーを交換し、本体に組み込みます。
ヘッド交換後はテープパス点検は必須ですが、パーツの精度が高いので調整は不要な状態でした。
録音再生も各モード良好です。
以上D-05の2台、修理完了です。