ナカミチの2ヘッドデッキ、BX-2を入手しました。
動作未確認というものでしたが、どのみちメンテナンスを行いますので不動品でも関係ありません。
1982年発売です。当時の価格は79,800円で普通のメーカーであれば高級機になりますが、ナカミチでは入門機に分類される価格帯です。
2ヘッド、シングルキャプスタンというシンプルな造りです。
一応動作確認したところ、まったく問題なく再生されました。修理するという楽しみが無くなり少しモチベーションが下がりましたが、気を取り直して必要なメンテナンスを行います。
カバーを開けて、メカを固定している上1下2本のビスを外すとメカを取り出すことができます。
メカも非常にシンプルです。トラブルを起こしそうなところは限られています。
3モーターです。左から「キャプスタンモーター」「リールモーター」「カムモーター」です。
故障が起きそうなところはこのリーフスイッチです。左写真はメカの動作状況を検知、右写真はカセット挿入を検知するためのものです。接点を清掃します。
アイドラーはギヤ式でメンテナンスフリーです。どうりで軽快にリールが回るはずです。
キャプスタンを抜いてグリスアップします。ベルトも劣化していません。
スライド式VOLは少し接触不良が見られましたので接点復活剤を施します。メカを元通りに組み付けて、アジマス、テープ速度の調整を行います。ここまでが機械的なメンテナンスです。
続いて電気的なメンテナンスになりますが、この機種にはユーザーが行うことのできるバイアス調整機能がありません。バイアスは本来、テープごとに調整を行う必要がありますが、操作の煩雑さを避けるため、その機能を省略し製造時に標準的なテープに合わせたセッティングを行っている機種が多くあります。そのため、そういった機種の使用説明書には推奨テープのメーカーと品名が記載されていることがありました。
ただし、そういった機種でも内部にはちゃんと調整ツマミが付けられています。しかも流石ナカミチです。テープの種別ごとに、左右独立でレベルとバイアス調整ができるようになっています。
アナログテープデッキは、ヘッドの摩耗やパーツの経年劣化により周波数特性が変化します。それをこれらのツマミで補正することになりますが、今はPCとDAコンバーターがあれば比較的簡単に調整を行うことができます。
数種類の異なる周波数(右写真は左から315Hz、1kHz、10kHz)の音源を同時に録音し、それを再生し、左右CHとも録音時と同レベルでかつフラットになるようにバイアスとレベル調整を行います。
3ヘッドデッキの場合は、録音再生モニターをしながら簡単に調整を行うことができますが、2ヘッドの場合は録音ー再生ー調整ー録音ー再生ー調整~を何度か繰り返します。もちろんテープの種類別に行いますので結構な時間が掛かります。
この調整を行った結果、マクセルのURでも高域の伸びのある音で録音できるようになりました。ただし、先ほども書きましたが、本来はテープごとにバイアスを調整する必要がありますことをご留意ください。
なお、バイアスキャリブレーション機能が装備されたデッキは、上記のような調整を自動で行ってくれますので手動調整は原則として不要です。また、マニュアル調整の機種の場合はメーターなどで確認することはできませんので、ご自分の耳を頼りに好みの音に調整してくださいね。