先日当店のネットショップでDATデッキを購入されたお客様からPCM-2800の修理依頼がありました。
「動作したりしなかったりする」「ローディング時にギーという異音」「カセットを取り出すときにテープが内部に引っ掛かる」といった症状を抱えているとのことです。ローディング機構に不具合があると思われます。
デザインはDTC-A8に似ていますが、4ヘッド機です。
業務用の機器ですので家庭用機器とは異なり入出力端子はキャノン仕様となっています。家庭用の機器に接続するためにはRCAケーブルにアダプターを接続する必要があります。内部もA8に似ていますが、入出力端子、4ヘッド関連の基板が追加されています。
カバーを開けてメカの作動状況を目視で確認します。このときは正常に作動しましたが、異音はしますし、ローディングが弱々しい状態です。
メカを取り出し修理を進めます。ヘッドやRFアンプは2000ES、77ESと互換性がありそうです。
標準のスポンジ製ヘッドクリーナーが装備されています。経年劣化による性状の変質によりヘッド表面を侵しますので後ほど撤去します。
メカをひっくり返し、まずは基板を取り外します。
右下のモーターの回転をゴムベルトを介して黒いリングギヤを駆動します。そうするとリングギヤに取り付けられたテープガイドが上下してテープをヘッドまでローディングする仕組みになっています。
ゴムベルト(後ほど新品交換します)を外し、指でギヤを回してみると、かなり動きが重いことがわかります。
ギヤやプーリーの中心部に塗られたグリスが固まって動きが重くなっていました。「ギー」という動作音は、グリスが塗られていない箇所が擦れて出ます。古いグリスは拭き取って、回転部分にはシリコングリスを塗布します。
リングギヤも同様です(右がメンテナンス後)。
綺麗になりました。組み付けて再度指で回してみると、先ほどとは比べようもないほど軽く回ります。
続いて2DDリールモーターユニットです。左右リールにはブレーキが装備されていて、そのまま回すとブレーキが効いて回転が重い状態が正常ですが、ブレーキの効きが甘くなっています。ブレーキが甘いと早送りや巻き戻し後にテープがたるみ、巻き込みの原因となります。
ブレーキを分解し、
パッドを張り替えます。
元通りに組み立てていきます。
トレイを外した状態です。スポンジ製ヘッドクリーナーを撤去します。理由は最初に書いた通りです。
ここも見逃しません。中央のピンチローラーの留め具が浮いています。A8やZA5ESでも同様ですが、プラスチックの留め具が劣化により割れて抜け出し、その次にピンチローラーが外れて故障します。弾性のある接着剤で抜け止め処置を施しました。
本体に戻して動作テストです。異音もなく動作も軽やかです。
録音テストも行いました。4ヘッドですので、録音を即再生モニターできます。
完了です。