SONYの4ヘッドDATデッキ、DTC-77ESの修理依頼をいただきました。
新品購入後の修理歴は無く、2・3か月前までは正常に動作していたということですが、
イジェクトを押してもトレイが開かないのでテープを取り出すことができません。この状態でも再生はできますが、ノイズが混じります。
メカを降ろしました。手動でトレイを開けてテープを取り出しましたが、可動式のテープガイドが所定の位置まで下がり切っておらず、途中で止まっています。そのためイジェクトに移行できなかったようです。
メカを裏返して、基板を取り外します。
この黒色のリングギヤに塗られたグリスが固まって動作不良となっています。
構成ユニットを分解します。
この銀色のパーツが固着しています。
CRCで固まったグリスを溶かして再グリスします。スムーズにスライドするようになりました。
ゴムベルトを新品交換し、回転する箇所にはグリスを塗布しながら組み立てていきます。
2DDリールユニットです。通常、この状態ではブレーキが掛かった状態ですので、リールを指で回すとある程度の抵抗感があるのですが、ブレーキパッドが摩耗して軽く回ってしまいます。これを放置するとどうなるかというと、巻き戻しや早送り後に停止したときにリールがピタッと止まることができす、テープにたるみが発生し、再生開始後にたるみが無くなるまでの数秒間は無音状態となります。また、最悪の場合、たるんだテープがメカに巻き込まれてしまいます。
分解します。
パッドの表面が摩耗していますので、新しく張り替えます。
メカを組み立てます。
本体に仮接続して動作テストを行います。トレイ開閉が正常に戻りました。
しかし、テープを再生すると、やはりノイズが混じっています。
計測器を用いてヘッドの信号を点検します。波形から、ヘッドとテープの接触状態が悪くなっていることがわかります。
テープガイドを調整し、ノイズは解消されました。
カセットホルダーを切り離します。
標準のスポンジ製のヘッドクリーナーは既にどこかに消えていますが、ヘッドに悪影響を及ぼしますので、不要となったアームは撤去します。
ピンチローラーを取り外して点検します。かなり硬化していますので、ゴムを張り替えたものと交換します。
ヘッドの信号を処理するRFアンプです。4ヘッド機は、「録音・再生用」と「再生モニター用」の2ケ装備されています。
中にある小さな基板上の電解コンデンサーが液漏れを起こしています。
基板が汚れていますが、損傷はありません。リード型のコンデンサーに交換します。
もうひとつのユニットも同様です。
フロントパネルを取り外します。
リモコン受光基板を取り外します。
ここのコンデンサーには液漏れは見られませんでしたが、予防保全のため交換を行います。
続いてディスプレイ基板です。計4個の電解コンデンサーがありますので、すべて交換します。
この機種で操作スイッチの接触不良が起きる場合は、これら電解コンデンサーの液漏れが原因です。
入出力別、モード別の録音再生状態を確認し、完成です。