当ブログ初登場のYAMAHA製3ヘッドカセットデッキKX-1000の修理を行いました。
dbxやマニュアルバイアス調整機能を搭載した高性能機です。
キャプスタンは回転しているようですが、アイドラーがスリップしてリールが回転しません。
メカの後部に十分なスペースが確保されていますので、整備性は良好です。
メカは簡単に脱着可能です。バックプレートを外して状態を確認します。
中央の丸いパーツがアイドラーです。
ゴムがカチカチになっています。サイズは外径14mm、内径10mm、幅2mmです。在庫がありませんので発注します。
あるはずのバックテンションベルトがありません。
溶けて左側リールに巻き付いていました。これではテープ走行が安定しません。
新しいベルトを取り付けました。
このデッキのテープパスは右写真中央の小さなネジで調整するようになっています。後ほど点検を行います。
今回は、オーナー様のご意向でゴムパーツ全交換です。ピンチローラーも新品の代替品に交換します。
※ピンチローラーのサイズは左側は径11mm、幅8mm、穴径2mm、右側は13mm・8mm・2mmです。これはSONYのESG以降、AKAI・A&DのGX-93等と同サイズです。ただしAKAI・A&D以外は交換に多少の技術が必要です。
キャプスタンベルトを交換します。外径約80mmです。
モード切替スイッチの接点を清掃します。
アイドラーゴムが入荷しましたので元通り組み立てていきます。
本体に組み込んで点検調整を行います。ミラーカセットでテープパスを目視点検します。OKです。
キャプスタンモーターの調整孔にドライバーを差し込んでテープ速度を合わせます。
ヘッドアジマスの調整、
録再バランスの調整を行います。
ところが、最終の動作テストで問題が発生しました。テープを再生中に突然走行が停止してしまいました。「アイドラーがスリップしたのかな?」と思い、再生ボタンを押しましたが、モーターの動作音が聞こえませんでしたので他に原因があるようです。そこで、巻き戻しのボタンを押すと、何もなかったようにモーターが回転し始めましたが、再度再生を試してみると、やはり数分後に停止しました。
この症状は何度も経験しています。リールモーター(型番はBHS7B05で入手は非常に困難です。)の内部接点の接触不良です。機器を長期間使用しなかった場合に接点の酸化等により部分的に接触が悪くなります。
ただし、接点が異常摩耗していなければ、モーター交換まですることはありません。モーターを回転し続けることで自己回復する場合がありますので、まずはそれを試すことにします。
ということで、早送りや巻き戻しなどリールが比較的高速回転する動作を繰り返し繰り返し行います。
早送りや巻き戻しなどリールが高速で回転する場合は、瞬間的に接触不良が発生してもモーターの慣性で回り続け停止することはありません。
半日ほど経ったでしょうか。動作確認したところかなり改善は見られたものの、やはり途中で停止します。
やむを得ず、一旦メカを取り出して、より高速回転させるためにモーターの端子に直接電圧を印加します。この機種は動作していないときはリールにブレーキが掛かっていますので、アイドラーを外してモーターがフリーに回転するようにします。
次第に電圧表示が上昇します。接点が改善されてきている証拠です。この状態で半日放置します。
120分テープを3往復、計6時間の試運転を行いました。症状は発生しなくなりました。
KX-1000は初めて扱いましたが、カセットデッキの技術が熟成されてきた時期に発売されたデッキだけあって素晴らしい音質です。機会があったら手に入れたいデッキの一台ですね。