以前AKAIのカセットデッキの修理依頼をいただいたお客様から、今回はPIONEERのCT-A9Dのご依頼をいただきました。
CT-A7については何度か手掛けたことはありますが、A9Dは初めてです。
MPX-FILTERのボタンが欠落しています。可能であれば修復を行いたいと思います。
さすがフラッグシップです。中身が詰まっています。メカを目視で確認すると、モードベルトとその奥に見えるキャプスタンベルトが溶けていることがわかりました。
化粧パネルを外して、前面4、底面2のビスを緩めメカを取り出します。
ここのギヤは分解する前に位置を覚えておく必要があります。白いカムギヤに合いマーク(赤いマーキングをしています)がありますので、トレイが開いた状態で3時方向を指すように組み立てます。
付着した溶けたベルトを洗剤で洗い流し、ベルトを取り付けます。GX機のカムモーターのベルトと同サイズです。
ここでトレイの開閉動作を確認しましたが、最初はうまく開閉しませんでした。原因は、トレイのガイドレールのある右側のパネルが歪んでいたことでした。なぜそのような状態になったのかはわかりませんが、人為的なものであることには間違いありません。
次はキャプスタンベルトです。
これも溶けたベルトが付着していますので洗面所でクリーニングします。台所用の洗剤またはアルコールを使用します。
このベルトもGX機のキャプスタンベルトと同サイズです。
続いてアイドラーゴムの交換を行います。
邪魔なパーツを脱着しアイドラーにアクセスします。メンテナンス性はあまり良くありません。
走行テストを行います。再生可能です。しかし、数分程度で勝手に停止してしまいます。
そのときのテープの状態です。右側ピンチローラーの箇所のテープがはみ出ています。これはリールの回転が停止したときに見られる症状です。
おそらくモーター内部の接触不良が原因ですので、テープを挿入しないで早送り状態で放置します。モーターが高速回転することで酸化した接点が自己回復します。
このデッキは、メンテナンス用にカバー下部が開くようになっていますが、
もっと見えやすくするためカセットホルダーのカバーを取り外します。
テープパスを目視点検します。テープ速度も規定値内です。
左右同レベルの信号が録音されたテープを再生し、基板上のツマミでバランス調整を行います。
再生ヘッドのアジマス調整を行います。
INPUTとOUTPUTのレベルを合わせます。
MPX-FILTERのスイッチは隣の「BLE-CLEAR」のものを型取りして作成しました。
塗装して取り付けます。単に差し込んであるだけです。
CDを録音します。ボタンひとつでバイアス調整を自動で設定する「AUTO BLE」を装備、
さらには、「under,peak,over」と3種類のバイアス量をお好みで設定可能になっています。
以上修理完了です。名機が蘇りました。