PIONEER製3ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、CT-A9Dの修理依頼をいただきました。
十数年前から故障状態ということです。
イジェクトが効きません。
カバーを開けます。黄色のプーリーに掛かっているはずのベルトがありません。
黄色のプーリーで駆動するギヤを指で回すとリッドが開きます。
フロントの化粧パネルを取り外します。
メカを取り出しました。このメカのリッドは、一般的なハメコミ式でなく、正面4か所のビスで固定されています。
メカの底面です。キャプスタンベルトが溶けて、フライホイールにこびり付いています。
メカ背面です。カムモーターユニットを取り外します。これ以降、本体側のギヤには極力触れないよう気を付けます。万一、ギヤが外れると、組み付けに相当苦労します。
プーリーに溶けたベルトが付着しています。モータープーリー側はシャフトが回らないほど酷い状態です。
プーリーを外しました。溶けたゴムでモーターシャフトが固着しています。CRCでゴムを溶かし、
モーターに直接電圧を印加して空転させ、数時間放置します。
キャプスタンモーター基板を取り外します。
オレンジクリーナーでこびり付いたゴムカスを除去します。
新しいベルトを掛けます。径73mmです。
こちらは径40mmです。
カセットハウジング内の化粧パネルを取り外します。
アイドラー脱着に支障となるパーツを分解し、硬化したゴムリングを交換します。
メカを本体に仮接続して、動作確認を行います。
録音を試そうとしたところ、左CHの入力がありません。
RECVOLの接触不良が原因でしたので、接点復活剤を処置します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し、速度の点検を行います。
ヘッドアジマスの調整を行います。
AUTO BLEを作動させ、録音状態を確認します。
このメカの仕様は少し変わっています。テープをセットすると、センサーが検知してリッドが自動で閉まります(カセットハーフの材質により閉じない場合もあります)。
イジェクトボタンを押すと開きます。ここまでは普通ですが、もう一度閉めたいときは、イジェクトを押しても閉まりませんので、テープを出し入れするか、指でリッドを軽く押してやるか、イジェクトボタン以外の操作ボタンを押してやらないと閉まりません。
テープポジションの異なる複数のテープを用いて録再状況を確認し、修理完了です。