昨年秋にヘッド交換を行ったTC-K333ESJですが、最近テープの冒頭で「クシャクシャ」と音がしてテープにシワが付く状態となったとのことです。
走行が乱れてテープにキズが付くのは、ほとんどが左側ピンチローラーが原因です。「汚れ」あるいは「劣化」のいずれか、またはその両方によりテープが進行方向と垂直方向に振れて、テープガイドから脱線しキズが付きます。そして、この不具合は特にSONYのESシリーズのデッキにおいて多発します。
オーナー様は定期的に専用液でクリーニングを行っているとのことですので、今回は「劣化」が疑われます。
ピンチローラーの表面に汚れは見られませんが、キャプスタンにはテープから剥離した磁性体が付着しています。この状態で手持ちの150分テープを再生しましたが、不具合は再現できませんでしたので、室温なども関連している可能性があります。
予定通りピンチローラー交換を前提に作業を進めます。
SONYのデッキでピンチローラー交換する場合は、メカの脱着が必須です。ちなみにAKAIのGX-93などは脱着せずに行うことができます。
メカ脱着にはヘッドのコネクタを切り離す必要があり、録音・消去ヘッドのコネクタは2層になっているオーディオ基板の下側に接続されています。
上部の基板を脱着し、コネクタを切り離します。
メカを固定している上下4本のビスを外すことに加え、上部2本の黒いビスを緩めなければメカは取り出せません。
メカを内部から引き上げます。
カセットホルダーを切り離します。向かって左側のスプリングとプレートを外します。
続いて支点部の固定具を外します。
ホルダーを外すには少しコツが必要ですが、力を入れる必要はありません。
左右ピンチローラーの状態です。キャプスタンの汚れが気になります。ピンチローラーは表面にテカリが出ています。
この左側は、調整式になっていますので注意が必要です。
下から見たところです。ここの寸法をノギスで0.1mm単位まで測定します。21.1mmです。この数値が大きい場合はシャフトの緩みが起きていますので修理が必要です。
同サイズの代替品新品を用意します。新品を硬度計で測定すると70~75の値を示します。(両手が必要なので測定中の写真はありません)
右側はピンチローラーを上に引っ張ると外れます。
左側は少し面倒です。まずは、破損防止のためテープガイドを一旦取り外します。
木製の台の上でシャフトを打ち抜きます。
交換しました。元々のものの硬度は80を示しました。硬化が進行しています。
最初に測定した位置に合わせます。
キャプスタンを清掃します。
ホルダーを取り付けます。
メカ上部にはコントロール基板からコネクタが3つ接続されています。うち2つはフロントパネル内に隠れてしまいますので、メカを元の位置に戻す前に接続しなければなりません。
メカを戻しました。
念のため、ミラーカセットでテープ走行を目視点検します。ヘッドアジマスも計測器を用いて確認します。
テープ走行に不利な長尺テープを用いて再生テストを行います。特に冒頭部分を重点的に行います。
完了しました。