今日はTechnics のRS-M270Xの修理を行いました。
40年ほど前に新品購入したものの、この20年間は故障のため押入れに保管してあったということです。このデッキでdbx録音した大事なテープを再生したいということで当店にご依頼いただきました。この機種に関してはネットでも情報はあまりありませんので、手探りでの修理となります。
ヘッドは上下しますが、リールが回転しません。
カバーを開けて動作状況を観察します。メカを覗き込むと、アイドラーがスリップしていることがわかりました。
フロントパネルを取り外します。操作スイッチには今では入手できないようなタイプが使用されていますが、幸いにも接触不良は見られません。
化粧パネルを取り外します。アイドラーゴムのスリップにより発生したゴムカスが散らばっています。
アイドラーのユニットを外しました。しかし、ここで問題が発生しました。使用されているゴムリングが特殊形状です。断面が四角(角ゴム)でなく、T型になっています。これでは同じものは入手不可できず万事休すか?と思いましたが、ここで、あることを思いつきました。
ゴムリングの外径がA&DのGX機のアイドラーとほぼ同じです。流用にチャレンジします。
取り付け部のシャフトの太さが異なりますので、中心穴径の拡大などの加工を行い、交換します。
問題無くテープ走行できるようになりました。しかし、今度は別の問題が発生しました。波を打っているように音質が変化します。これはテープが蛇行しているときに起こります。
まずはピンチローラーを専用クリーナーで清掃します。しかし改善は見られません。
ということは、バックテンションです。このデッキのバックテンションは、左側リールに内蔵されているスプリングにより発生しますが、
スプリングの力がかなり弱く、ほぼテンションがかかっていません。あまりテンションを強くすると、早送りや巻き戻しの速度に影響しますので、わずかに強くなるようスプリングを交換します。
これでようやくテープ走行が改善され音質が安定しました。
315Hzのテープを再生して速度の点検を行います。
メカ上部のツマミを回して、調整します。
ヘッドアジマスの調整を行います。
左右同レベルの信号を入力し、
それを録音したものを再生し、バランス調整を行います。
ところが、クロムとメタルテープで録音すると再生レベルが小さく、音質も不良です。この機種はバイアス固定式ですので、使用するテープを選びますが、それにしてもこのままでは問題があります。
原因がわかりました。手動のテープセレクターの接触不良が原因です。内部から接点復活剤をスイッチの隙間に注入します。これで音質は改善されましたが、クロムテープではレベルが低めに録音される傾向にあります。
次はdbxをONにしての録音再生を行いましたが、左右バランスが悪い状態でしたので、サービスマニュアルに従い、レベル調整を行いました。しかし、録音再生すると、やはり多少の差異が生じます。製造後40年経過したデッキですので、こういったことは珍しくありませんので、最後は手動での調整となりました。
念のため、オーナー様が録りためたテープを送りいただいて再生状況の確認を行います。
修理完了です。