他の方が修理途中で断念された機器には、思わぬ落とし穴が待っていることがあります。
ナカミチのZX-5です。ご依頼主が途中まで整備したものの、メカがまったく無反応ということで当店にご依頼いただきました。
メカを取り出しました。
このカムモーターがピクリともしません。
モーターとカム、スイッチを丸ごと取り外します。そしてモーターに直接電圧を加えてみましたが、まったく回転しません。しかし、諦めずにモーターシャフトを数回転、指で回していると突然回転しだしました。内部のブラシ部に接触不良が起きていたようです。そこで、このモーターが回転している状態で半日以上放置することにしました。これにより、接点が自己回復(リフレッシュ)します。
ついでに接点も清掃します。
バックテンションベルトにかなり太めのベルトが使用されています。これではリールに過大な負荷が掛かり、早送り等の速度に影響を及ぼしますので、細めのものに交換します。
メカを本体に組み込み、テープをセットして再生ボタンを押すと、テープ走行が開始しました。ところが、2秒ほどで停止してしまいます。早送りも巻き戻しも同様ですので、最初は回転センサーの故障かと思いましたが、何となく嫌な予感が頭をよぎりました。
左右リールを取り外してみました。
予感は的中しました。同じメカを採用しているほかの機種とは異なり、この機種は右側のリール取り付け部の斜め上にセンサーがあります。そのため、回転を検知するための白黒の模様が右側リールの裏側につけられているのですが、この機体は左右逆に取り付けられていました。
リールの左右を入れ替えると不具合は解消され、途中で停止することは無くなりました。しかし、巻き戻し時にアイドラーが空回りします。また、メーターは振れますが音が出ません。
よくよく観察すると、アイドラーが少し前方にせり出していました。そのためギヤの噛み合わせが悪くなっていたようです。そこで、モーターのシャフトに取り付けられているギヤを指で1mmほど押し込んでやると、空回りは解消されました。
次は、「音が出ない」件です。
私が手掛けた時は、コネクタが1ケ外された状態でした。そのコネクタと同じ形状のコネクタがもうひとつあり、それが、間違った位置に差し込んでありました。それを逆に挿すと、無事音が出ました。以前、他業者が修理を途中放棄したデッキでも似たようなことがあり、原因を見つけるのに苦労した経験があります。同じ形状のコネクタがある場合、挿し間違えると回路やセンサーの故障を引き起こすことがありますので、引き抜く前に必ずマーキングすることが必要です。
通常ではあり得ない想定外のトラブルに時間を費やしてしまいましたが、今回は調整不要というご依頼ですので、ここで完了です。