アナログ機器であるカセットデッキでは、適切なメンテナンスによりテープ速度を基準値内に保つことが重要です。
テープ速度は、キャプスタンの回転速度とシャフトの直径で決定されますが、そのキャプスタンの速度の調整方法は大きく2種類に分けられます。
一つ目は、手動方式になります。回転するモーターの速度を、モーターの内部またはコントロール基板上の半固定抵抗を回して、調整します。もちろん、調整には、基準となるテストテープと測定機器が必要です。
この手動調整には二つの欠点があります。一点目は、経年によりモーターの回転速度が微妙に変化しますので、定期的な点検調整が必要になるということです。二点目は、電源ON時とモーターが温まってからでは、速度がわずかに変化しますので、速度調整を行う場合は、機器が十分温まってから行います。そのため、大切な録音を行うときは機器が十分温まってから行う必要があります。また、キャプスタンベルトを交換した場合は、ベルトのテンション変化によりモーターに加わる負荷も変化しますので、速度調整は必須の作業となります。
二つ目は、自動方式です。キャプスタンの回転を検知してクォーツロックを行います。この方式により、先ほどの手動調整の欠点をカバーすることができます。
しかし、この自動調整には、大きな欠点があります。新品時では問題になりませんが、製造後相当使用された機器では、キャプスタンの摩耗が発生し、テープ速度に狂いが見られるということです。キャプスタンはクオーツロックで一定速度で回り続けますが、摩耗したキャプスタンでは速度が低下します。手動調整方式では簡単に調整できますが、クォーツロック方式の場合は基本的に調整はできませんので、大掛かりな回路改造(実際に行うことは困難です)、または摩耗していないキャプスタンとの交換(摩耗していないパーツの入手が困難です)が必要となります。
一方、テープ速度の許容範囲については、メーカーによって異なっていますが、おおむね、̟±0.5~1.0%程度となっています。ただし、ナカミチなど一部メーカーでは、「基準値を中心として測定機器の針が振れる(速度は常に僅かな変動を伴います)ように」調整することとされていて、特に許容範囲は定められていません。なお、経験上、2%以上の狂いが発生すると、聴感でそれを感じることができます。
デジタル時代の現在では、速度調整など無用となりましたが、アナログ機器をお使いの場合は、そうはいきません。しかし、そういったいろいろと気を使わなければならないところがアナログオーディオの醍醐味や楽しさではないでしょうか。