AIWAの人気機種、EXCELIA XK-009です。
ときどき、「ブーン」という音が出力されるということで、当初はその修理のご依頼をいただきました。
3日ほど様子を見ましたが、不具合は再現されませんでした。オーナー様の使用環境の問題でしょうか?
ただし、巻き戻し時のアイドラーゴムのスリップ、時々速度が変化する、テープ終盤での音揺れ、という不具合が確認されました。以前、ベルト類は交換されたということですが、オーナー様のご意向により、メンテナンスを行うこととなりました。
カバーを開けます。
支障となるソレノイドユニットを取り外し、メカを取り出します。
カセットホルダーを取り外します。
以前も同様の不具合がありましたので、速度が変化するのは、このキャプスタンモーターの故障が疑われます。
サイズは異なりますが、同規格のモーターと交換します。
メカを仮接続した状態で動作確認を行います。速度の件は解消されましたが、
メカの動きを観察していると、キャプスタンベルトが蛇行していることがわかりました。
ベルトの品質の問題と思われます。交換すると蛇行は無くなりました。これで次のメンテナンスに移ることができます。
背面から分解を進めます。
リールモーターを取り外すと、アイドラーが現れます。
ゴムリング2枚貼り合わせたものが使用されていました。硬度65のCRゴム製のものと交換します。。
内部のリーフスイッチ接点を磨きます。
もう一本のベルトも新品交換します。
動作時に撓んでいたリールベルトも交換します。
写真中央は再生専用のアイドラーです。
モーターを取り外します。
こちらも2枚重ねでした。硬度45のCRゴム製と交換します。
メカを仮接続して動作確認を行います。しかし、やはり、やはりテープ終盤に近付くにつれて、音揺れが発生します。
あれこれと試行錯誤した結果、音揺れが発生しているときに、左側のピンチローラーを押し下げると、症状ががなり緩和されることがわかりました。
分解した最初のときから、ピンチローラーが左右とも交換されていることが気になっていました。
右側は表面が硬化しています。交換しましたが、状況に変化はありませんでした。
左側です。こちらは調整式になっていますので、事前に取り付け位置を測定しマーキングしておき、組み付け時に元の位置に戻します。
脱着して径を測定すると、標準よりも小さな9.3mmのものが装着されていました。10mmのローラーに交換します。
無事、症状は改善されました。小さなピンチローラーが装着されていたため、圧着力がかなり弱くなり、それが原因で音揺れが発生していたようです。テープの終盤に発生した理由は、リールに巻き取られているテープの量によって変化するテープのテンションが影響していたためと推測されます。
ここに至るまで長い道のりでした。やはり、ほかの方が整備された機器は要注意です。
これでひと安心、というところで、冒頭の「ブーン」という音がスピーカーから聞こえてきました。背面のOUTPUT端子に接続されているピンプラグに触ると解消されますので、接触不良が起きているのでしょうか?
底板を取り外します。
入出力端子の半田付け箇所にクラックが見られますので、再半田します。これが原因だったのでしょうか。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し、速度を合わせます。
ヘッドアジマスの調整を行います。
バイアスキャリブレーション後に録再バランス調整を行います。
録音テストを行い、修理完了です。