SONY製ダブルオートリバースカセットデッキ、TC-WR990です。
異音が発生するということで、他店でモーター交換したものの、ひと月も経たないうちに再発し、さらにはリバース動作にも不具合が発生したということで当店の出番となりました。また、デッキBでの音の籠りも気になるということです。
デッキA・Bともに再生は可能ですが、リバースに失敗することがあり、特にデッキBでは顕著です。また、その際、一時的に再生不可になることもあります。
異音は、機器を受け取ってから電源をONにした後、8時間程経って、ようやく「キー」という音が鳴りました。音の種類から、キャプスタンモーターの軸受けから発生しているものと思われます。
このキャプスタンモーターは、ノーマルスピードとハイスピードの切り替え付きですが、同じ新品モーターは入手できませんので、一般的に使用されている12V2400rpmの切り替えなしのものに交換を行うこととしましたが、大事なことを忘れていて、修理後に手戻り修理を行うことになってしまいました。
カバーを開けてメカを取り出します。
分解を進めます。
ピンチローラーは以前の修理で交換されたようですが、劣化したテープを使用したのでしょうか?かなり磁性体が付着しています。
モータープレートを取り外します。
このモーターと交換します。
元のモーターです。おそらく中古の在庫品と交換されたと思われますが、グリスアップ等しなかったため再発したと思われます。
端子が4つあります。左から、マイナス、プラス、コントロール用、コントロール用です。このうちマイナスとプラスだけ使用します。
交換しました。
ベルトも交換済みのようですが、念のため、当店で使用している高品質のものに交換します。
フライホイールを取り外します。
モーターユニットを取り外します。
ベルトの掛かるプーリーを脱脂し、新しいベルトを仮掛けします。
ロータリーエンコーダーを分解します。
リバースの不具合は、ここの接触不良が原因です。汚れた接点を研磨清掃し、スライド接点専用グリスを塗布します。
オートセレクタ用のスイッチ接点を磨きます。
新しいベルトを掛けます。
メカを元に戻して動作確認を行います。ところが、かなり早回し再生になり、調整してもダメです。ここでようやく、モーターの規格(回転数)が異なることを思い出しました。残念ながら、同じ回転数のものは入手できません。
元々のモーターに戻します。
電圧を印加すると、やはり「キー」という金属音が鳴ります。
シャフト部にグリスを処置します。明らかに回転がスムーズになり静音化しました。
本体に戻して動作確認を行います。
デッキAもまったく同じメンテナンスを行い、動作確認を行います。リバースの誤作動は無くなりました。この後、3日間ほどかけて異音が再発しないことを確認します。
調整に移ります。テストモードに切り替えて、パネルのハイスピードボタンを押すと、倍速再生になります。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し、倍速の630Hzになるよう合わせます。
ノーマルスピードに戻して調整します。デッキBも同様です。
へどアジマスの調整を行います。デッキA・Bともに、フォワード、リバース方向で調整します。
録再バランス調整を行います。
テープポジションの異なる数種類のテープで録再状況を確認し、修理完了です。