ヤマハ社製3ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、K-1Xの修理依頼をいただきました。
「早送りが途中停止する」「カウンターの進みが遅い」という不具合を抱えているということです。なお、3年前に一度メンテナンスを受けているということです。
再生はひとまず正常のようです。ただし、お話にあった通り、カウンターの進みがかなり遅い状態です。
早送りは、最初は正常ですが、終盤に近付くにつれ低速になり、遂には停止してしまいました。最初はアイドラーゴムの劣化が原因と思いましたが、意外な事実が待っていました。
カバーを開けてメカを降ろします。
まずは、アイドラーゴムを交換します。
変形したバックテンションベルトを交換します。
ここで問題が発生しました。ベルトを掛けようとしたところ、リールの回転が非常に重いことに気がつきました。最初はブレーキが掛かりっぱなしなのかと思いましたが、そうではありませんでした。
原因は、バックテンション用のプーリー(写真中央:白色の円形のパーツ)が固着していたためです。これではベルトでつながっているリール回転が重いのは当然です。
ドライバでこじって取り外しました。すると、シャフトに接着剤のようなものが付着していました。理由はなんとなくわかりますが、あまりこのメカに精通していなかった方が修理されたためと思われます。これが早送りに不具合が発生した一番の理由です。
シャフト部を清掃し、クラッチ部分を元通り組み立てます。
早送りの不具合は解消されました。続いてカウンターの修理に移ります。
カウンターの不具合は、センサー関係の故障、または、リール周りの不具合と考えられます。センサー関係は修理できませんが、とりあえず、左側のリールを取り外したところ、裏側の銀黒の模様が乱れていました。黒色の部分は一部が剥げ落ち、銀色の部分は汚れています。
この模様は、回転センサーがここに光を当てて、その反射によって回転数を検知するためのものです。似たような状況は過去に何度も経験済みですので、模様が乱れていた理由はすぐにわかりました。バックテンションベルトが加水分解で溶けて、リールに巻き付き、それを洗剤等で清掃した際にこのような状態になったと考えられます。
黒色部分は補修し、銀色部分は綺麗に清掃しました。
念のため右側も点検しましたが、こちらは異状なしです。
大幅な改善は見られませんでしたので、やはりセンサーまたは回路の問題でしょうか?
録再状況を確認し、修理完了です。