KENWOODの3ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、KX-7060Sの修理依頼をいただきました。
スタンバイランプは点灯していますが、電源が入りません。SONYのデッキでも同様の故障が起きることがありますが、その場合はメカの不具合が原因です。この機種ではどうでしょうか?
カバーを開けました。メカは以前取り扱ったことのあるKX-7050と同じようです。
メカを脱着するためにはフロントパネルを取り外す必要があります。
背面のパネルを取り外し、
右側のフライホイール下にあるトレイ開閉用のベルトを交換します。内径40mm、太さ1.5mmのベルトです。
モード切り替え用のベルトも交換します。
メカを本体に戻しましたが、残念ながら改善は見られません。基板の故障確定です。
回路図を元に基板の点検を行うと、18Vラインに問題があることは分かりましたが、元を辿ると、電源スイッチの信号をLSIが検知し、そこから4.5Vの電圧がトランジスタに印加され、26Vのラインから18Vが供給されるようになっています。100%確実とは言えませんが、LSIの故障が濃厚ですので、通常はここで修理不可となるところですが、基板交換という最終手段が残されています。
しかし、ジャンク機を入手するための費用が加算されますので、オーナー様にその旨お知らせします。その結果、快諾をいただきましたので修理を継続します。
1週間ほど要しましたが、入手しました。
本体から基板を取り外し、
交換します。
ディスプレイが点灯しました。輝度が少し落ちていますが、部品取り用に入手した機体も同様でしたので、この機種のウィークポイントのようです。(輝度の調整はできません)
と、ここで新たな問題があることが判明しました。トレイが上手く開きません。モーターが空回りしているような感じです。
交換したベルトサイズに問題がある可能性がありますので、径や太さの違うベルト数種類と交換しましたが、一向に改善されません。ということはベルトが原因ではないということです。
まさかと思いましたが、意外なところに原因がありました。モーターのギヤの差し込み部にひび割れが生じています。そのためこのギヤが空転していたようです。しかし困ったことに歯数などが特殊なタイプですので代替品はありません。
少し見づらいですが、シリコンホースでギヤを補強し、モーターのシャフトに滑り止めの加工をし、粘性の高い接着剤を処置し、モーターシャフトに差し込みます。
接着剤が乾くのを一晩待って、ようやく動作するようになりました。
調整に移ります。315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の調整を行います。数値は上下しますので、振れ幅の中心が315Hzになるよう合わせます。
ヘッドのアジマス調整を行います。
ATCSでバイアス調整を行った状態で、
録再バランス調整を行います。
回転が重くなったVOLに潤滑油を処置します。
テープポジションの異なる数種類のテープで録音再生状況を確認し、修理完了です。