本日はDTC-1500ESを修理します。
SONYの民生用では最高峰のDATデッキで、発売当時300,000円という価格、重量も20kg近くあり存在感満載です。
不具合の内容ですが、再生しようとすると「CAUTION」が表示され、電源を投入しなおすと正常に作動する場合があるというものです。これまでに数回メーカーのメンテナンスを受けていてヘッドも1度交換済みとのことです。
この機種によく見られるメカの不具合と思っていましたが、想定外の故障が待ち受けていました。
機器を受け取った時点ではローディングすらままならない状態でした。
天板を開けました。凄い造りです。電源部の巨大さがその実力を表しています。
この機種のウィークポイントは、リールモーターのドライブ基板上の実装型電解コンデンサーの液漏れですが、すでに修理済みです。液漏れにより基板が痛んだため、ところどころ苦心の跡が見受けられます。
メカを取り出しました。背面部には4ヘッドのためRFアンプが2個搭載されています。
トレイ開閉時に「ギー」と耳に障る音がしましたので。発生元をグリスアップします。
静音化しました。
メカをひっくり返し、ドライブボードを外します。
ヘッドは専用品です。モーター部は1000ES,ドラム部は2000ESといったところでしょうか。
やはりリングギヤが固着していました。CRCで清掃しグリスアップします。ベルトも交換です。
キャプスタンモーターとリールモーターユニットの状態は良好でした。
試運転です。通常はこれで動作良好になるのですが、何やら動作不安定です。ドラムヘッドが回転したりしなかったりで、一旦回転しだすと良好ですが、たびたび「CAUTION」表示となります。
となると、ドラムのドライブボードに問題がある可能性が高いので、オーナー様にご連絡し、当初より費用が嵩むことについてご了承をいただきました。
基板をよく見てみると、濡れているのがわかりました。コンデンサーの液漏れでしょうか?
1000μFが湿っています。ただ、測定したところ容量は抜けていませんでした。とりあえず他のコンデンサーもすべて新品に交換です。
ところが症状は一向に改善されません。動作不安定というのは一番質が悪い故障です。そこで、原因を特定するため、私が所有している1500ESと構成ユニットのスワップを行ってみました。
その結果、やはりドライブボードに不具合があることが判明しました。ただ、この基板は先のコンデンサー以外はチップ化されていてほぼ手の打ちようがありません。
念のため、コネクタ部の再半田を行っていたときです。基板の一部が茶色く汚れていて、半田付け作業をすると煙と共に嫌な臭いがしました。
原因が判明しました。基板面をアルコールで清掃したところ、見事復活しました。コンデンサーの電解液が不要な導通を促し動作不良が発生していたようです。
動作快調です。
今回のケースはまだあまり知られていない故障ですが、おそらく同じ機種には同じ故障が発生する可能性が高いでしょうから、同型機種をお持ちの方はぜひ当店にご相談ください。